財団法人 電力中央研究所

電力中央研究所 研究報告書(電力中央研究所報告)
[CRIEPI Research Report]

研究報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の研究報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。 ダウンロードの際には、当サイトの利用規約を遵守の上ご利用ください。

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研究報告書 詳細情報
[Detailed Information]

報告書番号 [Report Number]
Q18008
タイトル
高輝度放射光を用いたX線回折によるリチウムイオン電池の非破壊劣化評価法の提案
[Title]
Proposal for Non-Destructive Degradation Estimation of Lithium-Ion Battery by High-Flux Synchrotron X-ray Diffraction Measurement
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
電力貯蔵用途のリチウムイオン電池(LIB)は、高い充放電効率とともに経済性や保守の観点からポータブル用途以上に長寿命が求められる。そのため、LIBの劣化機構の解明とそれに基づく寿命予測の開発は、LIBの長期間運用にとって重要である[1]。当所ではこれまで電池解体により取り出した正負極の容量評価手法[1]や、非破壊分析として熱[2]、電圧[3]等の応答から電池内部の劣化状態を診断する手法を開発してきた。さらに充放電時のセルへのX線照射により正極活物質の構造変化を明らかにする非破壊分析にも取り組んでいる。これまで汎用X線回折装置を用い二種類の正極活物質からなる混合正極の試作単板セルにおいて、充放電に伴う劣化機構を明らかにしてきた[4]。本非破壊分析手法を市販LIBに適用する場合、正極だけでなく負極も複数枚積層されるため、高エネルギー・高輝度の放射光X線源を用いる必要があり、適切な測定条件の決定や劣化電池を対象とした解析結果の妥当性を明らかにする必要がある。

目 的
放射光施設SPring-8のX線を用い、厚み5 mmの市販LIBを対象に、正負極活物質の厚み方向における利用領域の平均情報を抽出できる透過型X線回折の測定条件を決定する。さらに連続充放電後の電池の劣化状態を、正負極活物質の利用領域の変化と比較して、本手法の妥当性を明らかにする。

主な成果
1.X線回折測定条件の決定
充放電に伴う正負極活物質の回折ピーク角度の変化量は、正負極活物質の利用領域の決定に必要不可欠である。一方X線の高エネルギー化による複数枚積層の正負極に対する透過力の向上は、回折ピークの角度変化を小さくし、その結果利用領域の決定の精度は低下する。回折ピークを確実に検出できるX線の透過率20%を確保するため、X線透過距離、対象電池の構成材[3]の線吸収係数等から照射X線エネルギーを37.7 keVと決定した。

2. 劣化電池における正負極活物質の内部状態変化の検出
対象電池の負極活物質は黒鉛、正極活物質はニッケルとコバルトを含む層状酸化物(NCA)とマンガンを含むスピネル酸化物(LMO)の混合正極であることをX線回折測定と蛍光X線分析から確認した。
混合正極の主成分であるLMOの格子定数を回折ピーク解析から求め、既報[4]と同様に放電に伴う回折ピーク角度(格子定数)の変化と放電状態(SOD)の相関を得た(図1)。劣化電池のLMOの格子定数を、得られた相関に適用して放電前後におけるSODが4%、76%とそれぞれ求まり、利用領域に対応するSODの差分が電池劣化により72%に減少したことがわかった(図1)。同様に本手法をNCAや黒鉛にも適用した結果、劣化後の正極および負極のSODの差分は、電池の容量維持率と概ね一致した(表1)。さらに同構成の正負極を用いた劣化電池の解体分析から明らかになっている、SODの差分の減少が容量低下の主要因である結果[3]と照らし合わせて、本解析結果が妥当であることがわかった。

今後の展開
劣化がさらに進んだ電池を用いて、本手法の適用限界を明らかにする。
[Abstract]
4 Ah-class pouched lithium-ion batteries are used to develop a non-destructive analysis method using a synchrotron
X-ray source. X-ray fluorescence analysis, X-ray absorption fine structure analysis and X-ray diffraction (XRD) analysis in the battery revealed that the two oxide electrodes were configured as a mixed positive electrode and the graphite was configured as a negative electrode. An angle shift of the diffraction peaks is detected between positive and negative electrodes during the battery discharge process. The peaks in the positive electrodes correspond perfectly to the battery capacity, while the peak position and ratio between different stages in the negative electrode are relative to the capacity. This XRD measurement is conducted in a configuration to detect X-rays traversing the battery, which includes information on stacked positive and negative electrodes within the same. The batteries are electrochemically tested with repeats of the charge-discharge process at 700 cycles. XRD patterns are obtained for the fresh and the fading batteries, whereupon peak information is calculated in both electrodes. The utilization range in the negative and two positive electrodes are estimated in the degraded batteries before and after discharge processes using the peak information in the degraded batteries and the relationship among the peak positions and the peak ratio of both electrodes in the fresh battery.
報告書年度 [Report's Fiscal Year]
2018
発行年月 [Issued Year / Month]
2019/04
報告者 [Author]

担当

氏名

所属

小林 剛

材料科学研究所 電気化学領域

山本 融

エネルギー技術研究所 エネルギープラットフォーム創生領域

キーワード [Keywords]
和文 英文
放射光 Synchrotron radiation
X線回折 X-ray diffraction
非破壊分析 Non-destructive analysis
リチウムイオン電池 Lithium-ion battery
劣化評価 Degradation estimation
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