電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

R19002

タイトル(和文)

再生可能エネルギー電源による動的無効電流制御が基幹系統事故時の系統安定性等に及ぼす影響

タイトル(英文)

Impacts of dynamic reactive current control with renewable energy sources on power system stability in large disturbance

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
 太陽光・風力などインバータを介して系統に連系される再生可能エネルギー電源(再エネ電源)の導入拡大により同期発電機の並列容量が減少し,将来的には系統安定性の維持が困難になるおそれがある。このため,海外では再エネ電源に系統安定化をサポートする様々な制御機能の付加を義務化する動きが進んでいる。これらの制御機能のうち,系統事故時の電圧安定化への寄与を期待する機能として動的無効電流制御があるが,同期発電機と異なる特性を持つ再エネ電源による高速な無効電流の供給が種々の系統安定性等に及ぼす好ましくない影響については十分に整理されていない。
目  的
 再エネ電源における動的無効電流制御について,文献調査に基づき海外動向を把握する。また,Y法シミュレーション解析により,基幹系統事故時の系統安定性(電圧,過渡安定度)および制御系の安定性の観点から,効果と留意点を明らかにする。
主な成果
1. 動的無効電流制御に関する海外動向の把握
 海外の連系要件などを対象として文献を調査し,動的無効電流制御による系統への貢献を表1に整理した。当該制御は距離リレーの動作の信頼性向上や,事故時運転継続機能を有さない再エネ電源の脱落量の抑制などを主目的とし,必要に応じて再エネ電源に要求すべき制御機能とされている。また,その基本的な特性やオプションとして選択可能な追加機能については,国際標準IEC/TR 61850-90-7においてまとめられている。
2. 動的無効電流制御が系統事故時の系統安定性等に及ぼす効果と留意点
 上記標準を参考に動的無効電流制御を模擬できるY法モデルを構築し,当該制御が特高系統の再エネ電源に付加されるものとして,系統事故時の系統安定性および制御系の安定性の観点からY法シミュレーション解析の結果を整理した(表2)。当該制御の留意点は以下の通り。
・事故除去後において,検出遅れなどの影響により電圧回復後も無効電流が不要に供給されることで過渡的な過電圧(持続時間は制御の検出遅れや遅延時間に依存する)が発生するおそれがある(図1)。
・過渡安定度面では供給された無効電流が負荷の電圧特性と作用して発電機動揺のダンピングを低下させる場合がある(図2)。
・短絡容量が小さな系統では,動的無効電流制御と系統で構成されるフィードバック系が不安定となり(図3),ハンチングが発生するおそれがある(図4)。
 以上から,動的無効電流制御は系統状況によって適切な設定が異なり,場合によって好ましくない影響が発生するおそれがある。このため,機能としては予め具備しておき,使用・不使用の選択やパラメータの設定・再設定は地点毎に判断することが望ましい。

概要 (英文)

As the introduction of renewable energy (RE) sources such as photovoltaics generation and wind turbine generation are expanded into power systems, conventional synchronous generators have been displaced with them. Since the synchronous generators have contributed to power system stability, there is concern that in the future it will be difficult to maintain the power system stability as before. To deal with this concern, grid-interconnection codes in some foreign countries obligate grid-connected inverters for RE to equip additional active power and reactive power control. These controls are classified into steady state stabilization and emergency state stabilization functions. Dynamic reactive current control is one of the latter stabilizations and it contributes to support the grid voltage during short-term and abnormal high/low voltage level by injecting reactive current to the grid. However, the impacts of the dynamic reactive current injection by the grid-connected inverters that have different characteristics from the synchronous generators on power system stability in large disturbance has not been clarified. In this study, some foreign grid-interconnection requirements of dynamic reactive current control is surveyed and the impacts of the dynamic reactive current injection by the grid-connected inverters on power system stability is examined using a reactive current control model based on IEC/TR 61850-90-7

報告書年度

2019

発行年月

2020/06

報告者

担当氏名所属

白崎 圭亮

システム技術研究所 電力システム領域

天野 博之

システム技術研究所 電力システム領域

キーワード

和文英文
太陽光発電 Photovoltaics Generation
風力発電 Wind Turbine Generation
系統事故 Power System Fault
無効電流制御 Reactive Current Control
系統連系規程 Grid-interconnection Code
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry