電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

R20001

タイトル(和文)

インバータ連系電源の大量導入時の系統保護に関する基礎検討ー故障計算用インバータ連系電源モデルの開発ー

タイトル(英文)

A Basic Study on System Protection with Large-scale Penetration of Inverter-Based Resources -Development of an Inverter-Based Resource Model for Fault Calculation Program-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
近年,太陽光発電(PV)を中心にインバータ連系電源( Inverter-Based Resources :IBR)が大量に導入されており,系統保護面では基幹系統からの短絡電流の低下による保護リレーの検出感度の低下等が懸念される。しかし,事故時にIBRが供給する電流による保護リレーへの影響は十分に整理されていない。この分析のためには,国内の保護リレーの整定検討時に利用される当所の故障計算プログラム(F法)において現用の国内のIBRのモデルを確立する必要がある。
目  的
三相IBRの実機を用いた試験により,その事故時の供給電流特性を明らかにし,F法用IBRモデルを開発する。これを用いて地域供給系統に広汎に適用される短絡保護用距離リレー(DZ)と地絡保護用地絡方向リレー(DG)への影響を明らかにする。
主な成果
1. F法用IBRモデルの開発
電力系統シミュレータでの試験結果(図1,2,3)および文献調査より,三相IBRの事故時の供給電流特性が以下であることを明らかにした。
① 自端の電圧の低下幅で供給電流が変わり,その電流は通電電流制限値で制限される。
② IBRの制御ロジックによって,供給電流の増加速度が異なる。
③ 特定の線間電圧を位相の基準に電流を供給する場合がある(図3はVbcが位相の基準)。
IBRモデルは①~③およびIBRの基本ロジックを参考に開発した。①より,IBRの供給電流が自端の電圧で変わり,各地点の電圧も変化するため,収斂計算をするように故障計算のフローを拡張した(図4)。また②より,事故時に電流が自端電圧に応じて速やかに変化する場合と事故前の電流値に維持される場合の2通りを実装した。さらに③より,正相電圧に加えて特定の線間電圧を位相の基準に設定できるようにした。F法用IBRモデルの算出結果とシミュレータ試験結果を比較して妥当性を検証した。
2. 地域供給系統のIBRが保護リレーに与える影響の一検討
図5の系統モデルでの解析結果を表1に示す。一線地絡事故時には事故相により零相電圧,零相電流の大きさおよび位相関係は変化しない。抵抗接地系統では零相量は変圧器の中性点抵抗の影響が支配的であるため,IBRの連系によるDGへの影響はない。一方で,二線短絡事故時には,A点のリレーが分流効果により実際のインピーダンスを正しく測距できず,DZが誤動作・誤不動作する恐れがある。これは,位相の基準が線間電圧である制御が要因で無効電流成分を供給するためであり,位相の基準が正相電圧である制御の場合はこの問題は生じないため,IBRは正相電圧基準の制御にすることが望ましい。

概要 (英文)

The feed-in tariff, introduced in 2012, led to a significant increase in photovoltaic generations (PVs) throughout Japan. About half of PVs are three-phase PVs that are connected to low voltage or medium voltage networks. Furthermore, it is expected that a large amount of inverter-based resource (IBR) including offshore wind power generation will be introduced in the future. Central Research Institute of Electric Power Industry (CRIEPI) has developed fault calculation program for protection relay setting study and circuit breaker capacity study. Two 10 kW three-phase inverters were tested in the CRIEPI's test lab to clarify their characteristics under various levels of the voltage dips that come from three- phase balanced and unbalanced faults with various fault duration. The IBR model was developed base on measured responses obtained in the test lab. In addition, the effect of IBR on the protection relay was clarified from the analysis results of the medium voltage network using the developed model. The earth fault directional relay is not affected by the interconnection of IBR. On the other hand, the impedance measured by the phase distance relay may differ for each fault phase of the phase-to-phase fault depending on the control of IBR. This indicates that the phase distance relay may malfunction.

報告書年度

2020

発行年月

2021/05

報告者

担当氏名所属

会田 峻介

システム技術研究所 電力システム領域

キーワード

和文英文
三相インバータ Three-phase Inverter
故障計算 Fault Calculation
保護リレー Protection Relay
モデリング Modeling
電力系統 Electric Power System
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