財団法人 電力中央研究所

電力中央研究所 研究報告書(電力中央研究所報告)
[CRIEPI Research Report]

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研究報告書 詳細情報
[Detailed Information]

報告書番号 [Report Number]
Y06010
タイトル
排出権取引制度の実効性に関する事例研究レビュー
[Title]
A Review on Effectiveness of Emissions Trading Schemes: Empirical Evidences of Their Implementation
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
排出権取引制度は、効率的な温室効果ガスの排出抑制に有効な政策手段とされる。しかし、その本当の効果は、実際の事例をみなければわからない。米国では、早くから環境政策に排出権取引制度が活用されている。また、欧州でも、2005年からEU大での温室効果ガス取引制度(EU ETS)を開始した。これらの事例を通して、排出権取引制度の実際の効果を検証することが可能である。
米国のSO2・NOx、および欧州のCO2排出権取引制度の事例研究を通して、以下の点を明らかにした。
1. 排出権取引制度(Cap and Trade)は、運用上様々な問題があり、理論が期待する長所は必ずしも顕在化していない。
2. 米国のSO2排出権取引制度の対策費用削減効果については多様な見解がある。実際には、直接規制にも多くの柔軟な措置があり、弾力的な運用が可能である。また、現実の排出権取引では、市場は完全には機能せず、非効率が発生する。
3. 検討対象とした排出権市場に共通の特徴として、制度設計のあり方で市場価格が左右されるという特有の不確実性が指摘できる。このような状況下では、事業者が投資行動を見合わせ、長期的に望ましい設備変更が促進されない恐れがある。
4. 実際の制度では、排出権の初期割当ルールを決めるために利害関係者間の調整に相当の時間と情報量を要し、導入前の予想より大きな行政コストがかかったことが報告されている。
5. 排出権取引制度の効率性を最大限に引き出すには、域内の経済主体全てが参加する制度設計が理想である。しかし、実際の導入事例では、排出量の監視・報告にかかる負担が大きいために、少数の大規模排出源のみを対象とする場合が多い。
6. 排出権取引制度は、既存技術の普及やその低コスト化については一定の効果があったが、革新的な技術開発を促進することはなかった。むしろ、長期的な技術開発の経済的誘因を与えるには不十分な排出権の価格付けや、将来の排出権価格の不確実性によって、事業者の長期的な技術開発意欲を減退させた可能性が大きい。
以上から、排出権取引制度(Cap and Trade制度)の実効性については、今後一層の事後検証が求められるとともに、あり得る弊害や他の政策措置との比較評価を慎重に行う必要がある。特に、温暖化防止にとって本質的である長期的な投資や技術開発を促進させるには、他の政策措置の検討が重要である。
[Abstract]
An emissions trading scheme (ETS) has been promoted as one of the most promising options to control greenhouse gas emissions in a cost-effective way. However, these arguments are not necessarily proven as argued. By reviewing implementation and outcomes of the cap and trade systems, which represent one of the ETS systems and have been applied for several air pollutants in the U.S. and Europe, we can draw some lessons of ETS to be applied for climate change abatement. This report examines recent literatures reviewing three ETS implementation experiences, the U.S. Acid Rain Program, the NOx Budget Program, and the EU Emissions Trading Scheme. Our observations are the followings. i) Although we have seen substantial emission reductions under the regimes in all the three cases, similar or even better outcomes were obtained in other countries by conventional command and control approaches. ii) Cost savings from emissions trading may not be as large as originally expected. iii) ETS tends to stimulate diffusion of existing technologies but not necessarily to encourage technology innovation. iv) The ETS administration costs seemed to be larger than originally expected. v) Coverage of the ETS in reality tends to be limited in specific sectors and large emitters. This is probably because benefits for involving small emitters in the scheme seem to be relatively small against their costs of monitoring emissions. vi) Based on these experiences, it would be prudent to examine benefits and costs of ETS and to compare them with those of alternative regulatory schemes before introducing an ETS to climate change abatement regulations.
報告書年度 [Report's Fiscal Year]
2006
発行年月 [Issued Year / Month]
2007/03
報告者 [Author]

担当

氏名

所属

若林 雅代

社会経済研究所 地域経済・エネルギー技術政策領域

杉山 大志

社会経済研究所 地域経済・エネルギー技術政策領域

キーワード [Keywords]
和文 英文
地球温暖化防止対策 Climate Change Abatement Strategy
排出権取引制度 Emissions Trading Scheme
政策手段 Policy Instruments
経済的措置 Market-based Instruments
規制的措置 Command and Control
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