電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y07029

タイトル(和文)

政府支出の生産効果を考慮した動学的一般均衡モデルの開発-電中研フォワード・ルッキング型マクロ計量経済モデルの拡張-

タイトル(英文)

Development of a Dynamic General Equilibrium Model with Productivity effects of government expenditure:Extension of CRIEPI Forward-Looking Macroeconometric Model

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

マクロ計量経済モデルへの批判1に対処する目的で開発した電中研FL型マクロ計量経済モデルの基本構造を踏まえて、財市場・労働市場の均衡を明示的に考慮した動学的一般均衡(DGE)モデルを構築した。さらに、政府支出が社会資本の形成を通じて民間企業の生産に正の影響を与えるという意味での政府支出の生産効果をモデルに採り入れた。
(1)ベクトル自己回帰(VAR)モデルを援用することで、政府支出の生産効果を考慮すべきか否かを実証的に検討した。具体的には、VARモデルとDGEモデルに同じ財政政策ショックを与え、両モデルの挙動がなるべく一致するように政府支出の生産効果をあらわすパラメータを選択するという方法を採った2。1970年代・1980年代(前期とする)および1990年代(後期とする)でサンプルを分割して評価を行なったところ、両方の期間において政府支出の生産効果を考慮した方がVARモデルに近い結果となった。ただし、後期については、政府支出の生産効果は前期ほど明確ではなく、相対的には生産効果を考慮した方が良いという結果となった。
(2)このように、本稿で構築したモデルでは、政府支出の生産効果を通じた税収の変化なども考慮したシミュレーションが可能である。そこで、「経済財政改革の基本方針2007」に基づいて、今後4年間にわたって政府支出を年率3%削減するというシミュレーションを行ない、現行の財政再建がマクロ経済に与える影響を評価した。その結果、財政再建政策へのGDPの反応をみると、政府支出に生産効果がある場合には、それがない場合と比較して、最大で最終年(第13四半期から第16四半期)には年率で約1.3%ポイントの違いが生じる。これに伴い税収の反応も異なり、プライマリー・バランスの改善の程度は、生産効果がある場合には遅れることになる。ただし、これらの効果は中央銀行がインフレ・景気変動をどの程度許容するかに依存している。中央銀行がインフレ・景気変動に厳しく対処する場合、金利も大きく動くため、それに伴い資産所得変動を通じた税収の変動も大きいためである。
今後は、得られた結果を参考にしながら、本稿で構築したモデルを、国民経済計算体系と整合的な電中研FL型マクロ計量経済モデルに組み込み、財政再建に関する分析をさらに進める。

概要 (英文)

It is widely known that government expenditure yields a positive productivity effect. Therefore fiscal policy analysis ignoring it may lead to a wrong conclusion. In order to investigate the effects of short run fiscal policy, we incorporate the productivity effects of government expenditure into a Dynamic General Equilibrium(hereafter,DGE) model with a New-Keynesian type structure that may be suitable for short run analysis. The way of incorporating the productivity effect is to add a production function to the government expenditure. Using this model, we implemented several simulations. The results are the following:
(1)We calibrated parameters in the DGE model so that the impulse response of fiscal shock of the model well adequately fit that of VAR model, dividing sample periods into "1972Q1 to 1989Q2(former term)" and "1989Q2 to 2005Q2(later term)". As the result, we found that the positive productivity effect of government expenditure is confirmed for both terms, though the productivity effect is not so clear in the later term.
(2)We simulate the fiscal reform policy which decreases government expenditure at 3% annually for 4 years, as stated in the ongoing Japan's fiscal reform. The result shows that the effects of fiscal reform on economy differ depending on existence of the government productivity effect. As expected, if the productivity effect is present, the fiscal reform gives GDP a severe downward effect against the case without it.

報告書年度

2007

発行年月

2008/05

報告者

担当氏名所属

溜川 健一

社会経済研究所 地域研究領域

門多 治

社会経済研究所 地域研究領域

キーワード

和文英文
動学的一般均衡モデル Dynamic General Equilibrium Model
財政政策 Fiscal Policy
政府支出 Government Expenditure
生産効果 Productivity Effect
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