電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y10001

タイトル(和文)

給湯器の保有実態と住宅市場セグメントによる違いの考察

タイトル(英文)

Current status of use of water heaters and differences between housing market segmentation

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

給湯用のエネルギー消費量は、家庭部門の約3割を占めており、重要な省エネ対策分野である。しかし、省エネ型給湯器の本格的普及には至っておらず、その阻害要因については十分に明らかにされていない。給湯器の導入・設置に深く関与する主なアクターとしては、消費者、サブユーザー(ハウスメーカーやデベロッパー、工務店やリフォーム業者など)が挙げられ、その実態を把握することは有益である。そこで、全国約4200世帯を対象としたインターネット・アンケート調査を通じて、給湯器の保有実態を把握するとともに、給湯器選択の違いやその背景を考察した。主な成果は以下のとおりである。
(1)回答者全体の集計結果に基づき、給湯器保有実態(ストック)の概要を把握した。
・回答世帯の約9割では従来型給湯器を主に利用しており、省エネ型の割合は約1割となっている。
・省エネ型利用者の満足度や他人への推奨度は、従来型利用者より高い。しかし全体の実態としては、給湯器の省エネ性能に対する重視度は例えば「住宅性能表示制度」で扱われている評価対象項目と比べて低めであり、十分な検討時間をかけずに設置・交換される場合が多い。
(2)次に、住宅タイプ(戸建・集合住宅)と導入タイミング(新築・既築時)で区分した4つの市場セグメントごとに、給湯器の採用率(フロー)の違いやその背景要因について考察した。その際には、省エネ型給湯器の採用率と主な採用決定者に着目して各セグメントの特性を整理し、以下の示唆を得た。
・【新築・戸建住宅向け】消費者が給湯器選択に直接的に関与できる注文住宅の方が、分譲住宅よりも省エネ型の採用率が高い。しかし、注文住宅でも初期費用の高さなどから従来型が選ばれることもある。また、給湯器の省エネ性能へのこだわりが相対的に低く、業者の提案・提示や情報に左右される割合が高い。分譲住宅では、光熱費削減メリットを享受できない建設業者が給湯器選択の役割を担うことも、採用率が低くなる主な要因の一つと考えられる。
・【新築・集合住宅向け】同じ分譲住宅でも、集合住宅の場合は省エネ型の採用率が高い。その一方で賃貸住宅での採用率は依然として低く、原因の一つとしては、オーナー側には省エネ型を採用する十分な動機がないことが考えられる。
・【既築・戸建住宅向け】省エネ型の採用率は、不具合に伴う交換や交換前に利用していた給湯器の関連業者などに交換を依頼した場合において低めとなるが、全般的には採用率が高めである。しかし、省エネ型は初期費用の高さや、業者の提案・提示が給湯器選びに影響を及ぼしている。それでも採用率が高めであるのは、同じ戸建持家であっても新築住宅よりも既築時交換の方が、給湯器選びに消費者の意識が向きやすいことが一要因となっているものと推察される。
・【既築・集合住宅向け】集合住宅では持家・賃貸共に設置スペースや建物構造上の問題も加わるので、設備更新時に給湯器のタイプやエネルギー源が維持される傾向にあり、省エネ型の採用率は低い。賃貸住宅ではさらに、居住者が給湯器選択に関与することが難しく関心も低い。
(3)以上のように、市場セグメントにより省エネ型給湯器の採用を左右する要因は様々であるため、普及政策のあり方も異なる可能性がある。例えば、消費者が直接的に関与しやすい市場と実質的にサブユーザーや賃貸住宅オーナーの関与が高い市場とでは、情報提供・経済的インセンティブ・規制的措置などの必要性や期待される効果は異なることが示唆される。

概要 (英文)

Energy consumption for water heating accounts for approximately 30 % of the energy consumed in the residential sector in FY2007. Despite the high expectation of CO2 reduction effect, energy-efficient (EE) water heaters have not yet diffused widely. This report aims to analyze market of water heaters and to discuss barriers to energy efficiency for EE water heaters based on a questionnaire survey. Firstly, the result shows that the adoption rate of EE water heaters is high in market of new custom-built detached houses compared to that of new detached houses already build for sale. However, the high initial cost of EE water heaters is likely to stand as a financial barrier, and also customer choices tend to be influenced by builders' product lineup to extend even in the case of custom-built detached houses. Secondly, the adoption rate is relatively high in the case of newly-built apartments for sale, probably due to stiff market competition. In contrast, the conventional water heaters still dominate the market of apartments for rent due to the lack of incentive for apartment owners. Thirdly, on the renewal of water heaters for detached houses, the adoption rate of EE water heaters is relatively high, although there still remain barriers such as high initial cost, influence of line up of products that sales channel deals, etc. Finally, the result indicates that the renewal of water heaters for apartments faces the lock-in problem that makes it difficult to change energy sources and types of water heater. Moreover, it is implied that owners are reluctant to introduce EE water heaters due to a barrier called "principal-agent problem".

報告書年度

2010

発行年月

2010/06

報告者

担当氏名所属

元 アンナ

社会経済研究所 エネルギー技術政策領域

西尾 健一郎

社会経済研究所 エネルギー技術政策領域

岩船 由美子

東京大学生産技術研究所 エネルギー工学連携研究センター

キーワード

和文英文
給湯器 Water Heater
省エネルギーバリア Energy Efficiency Barrier
家庭部門 Residential Sector
アンケート調査 Questionnaire Survey
市場調査 Market Research
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