財団法人 電力中央研究所

電力中央研究所 研究報告書(電力中央研究所報告)
[CRIEPI Research Report]

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研究報告書 詳細情報
[Detailed Information]

報告書番号 [Report Number]
Y19001
タイトル
スポット市場への「限界費用」を超える入札に対する規制の在り方ー欧州での近年の議論の整理と日本へのあてはめー
[Title]
Examination of regulation on offering above marginal cost to spot market - Recent discussions in Europe and application to Japan
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背景
日本卸電力取引所(JEPX) スポット市場の約定量は、既に日本の電力需要の4 割近くを占めている。公正で競争的な需給関係を反映した価格形成に対する市場関係者の期待に応えるため、日本をはじめとする各国は卸売電力市場での相場操縦を規制している。
完全競争市場では、限界電源(入札価格が市場価格となる電源) の限界費用での入札が発電事業者にとっての最適戦略であり、これを超える金額での入札(高価格売り入札) は相場操縦と推定されるという主張がある。一方、需給逼迫時等における価格スパイクは設備投資等の価格シグナルであり、高価格売り入札だからといって直ちに相場操縦にはあたらないという主張もある。しかし、ここでいう「限界費用」にはいかなるものが含まれるのかということ自体、必ずしも明らかになっていない。
日本が相場操縦規制を採用する上で参考とした欧州では、近年、EU の機関やドイツの規制機関等において、高価格売り入札が相場操縦に該当するかという点について、明確化を図る動きがある。

目的
文献調査に基づき、高価格売り入札を相場操縦として規制することの是非や、その要件についての、欧州での近年の議論を整理検討する。その結果に基づき、日本での議論についての示唆を得る。

主な成果
(1) 欧州での「高価格売り入札」をめぐる議論の整理
欧州では、価格スパイクは需給逼迫の反映であり、既存設備の休廃止や設備の新増設等のシグナルとなるということが強く指摘されている。その結果、「価格が高いこと自体を規制するものではない」との考え方が、規制当局の相場操縦についてのガイダンスにおいて明示されている。
EUのガイダンスでは、「発電設備の限界費用を反映しない価格での売り入札」が相場操縦の類型の一つとして挙げられている。しかし、ドイツ連邦カルテル庁(BKartA)によれば、ここでいう「限界費用」の中には、燃料費とその輸送費用、保守点検費等に加え、CO2 などの排出費用や各種の機会費用、設備故障に対するリスクプレミアム等も含まれる余地があるとされる(図・左)。
さらに、約定価格と入札価格の差分では回収できない資本費を回収するため、高価格での売り入札を行うことも認められるという主張もある(図・右)。ただし、発電事業者が複数の発電設備を保有している場合、個別の発電設備の単位での費用の回収が可能な入札を行ってよいのか、それとも保有する複数の発電設備全体での費用回収しか認められないような入札しかできないのかという点については争いがある。
また、市場参加者の行為が外形的には相場操縦に該当する場合でも、正当な理由が存在し、認められた市場慣行に適合しているのであれば、市場参加者は違法な行為ではないと主張できる。しかし、現在のところ、卸売エネルギー市場における認められた市場慣行は存在していない。このため、市場参加者としてどのようなことを正当な理由として主張できるのかが具体的には明らかとなっていない。これを受け、規制当局のガイダンスを通じた具体化が求められている。

(2) 日本における議論に対する示唆
「余剰電力の全量を限界費用で市場供出している場合は相場操縦にはあたらない」というセーフハーバーの考え方を進める際には、欧州での議論と同様、ここでいう「限界費用」には何が含まれるのか、将来の設備投資インセンティブを確保するため、資本費の回収をどのような形で認めるのかを検討する必要がある。その際には、容量市場を通じた資本費の回収可能性についても考慮する必要がある。また、市場参加者が取引を行う上では、自らの行為が「市場相場を変動させることを目的」(変動目的) と認定されるか否かは、その行為が相場操縦に当たるか否かに直結する大きな関心事である。したがって、変動目的の内容の具体化が進められる必要がある。

今後の展開
卸電力市場における不公正な行為について、独占禁止法による規制と市場規制法による規制の相互関係について検討を深める。
[Abstract]
To meet market participants' expectation for price formation that reflects fair and competitive interaction between supply and demand, many countries including Japan regulate various types of manipulation in wholesale electricity market. One argument is that price spikes when supply is scarce are a signal to capital expenditures, so offering a high price is not necessarily equivalent to manipulation. On the other hand, it is argued that in a perfectly competitive market, bidding/offering at the short-term marginal cost of marginal power is the optimal strategy, therefore offering at a price exceeding marginal cost is illegal. Since last year in Europe, there has been debate over whether offering at such a high price is equivalent to manipulation, and discussions are underway. This report examines the pros and cons of regulating offers at prices exceeding marginal costs as manipulation, reviews the discussions in Europe and provides suggestions for Japan. The results are as follows:
In Europe, regulators state through guidance that offering a high price is not necessarily equivalent to manipulation. This is based on the belief that price spikes are an important price signal.
European regulators believe that marginal costs, as criteria for determining illegal manipulation, include various costs such as opportunity costs and risk premiums. In addition, there is an argument that prices above marginal cost can be offered to recover an efficient range of capital costs that cannot be recovered by the difference between system price and offer.
報告書年度 [Report's Fiscal Year]
2019
発行年月 [Issued Year / Month]
2020/03
報告者 [Author]

担当

氏名

所属

丸山 真弘

社会経済研究所

キーワード [Keywords]
和文 英文
スポット市場 Spot Market
限界費用 Marginal Cost
相場操縦 Manipulation
欧州連合 European Union
ドイツ Germany
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