【目的・目標】
地球温暖化の要因であるCO2を排出しなく、安定的に基幹電源として原子力発電は重要な役割をしています。そのなかで近年の化石資源の世界的な需要の増大を受け、超長期にわたってウラン資源を有効に活用できる高速増殖炉とその燃料サイクル(図A 参照)の技術開発の必要性が今般策定された原子力政策大綱にも謳われています。金属燃料・乾式リサイクル技術は、核拡散抵抗性が高く、超長寿命の核種をリサイクルできるため環境負荷の低減が可能であり、次世代のFBR燃料サイクルの候補技術の一つとして考えられています。この特徴に着目して、当所は1985年頃から米国、EUなどとの共同研究を活用して、その技術開発に取り組んできました。また、国と電気事業が一体になって進めてきたFBRサイクル実用化戦略調査研究(FS)において、実用化の補完概念として当所が中心になって研究開発を進めていくことが期待されています。
【成果(達成状況)】
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乾式リサイクル技術では、電解精製、TRU抽出、塩・カドミウム蒸留、塩廃棄物処理・固化、燃料製造など主となるプロセスが適用できることを確認し、現在は実燃料による実証試験と実用装置開発に移っています。実用規模の電解精製装置の開発では10kg規模のウランを電解により陰極に回収できることを確認しました(図B 参照)。
これらの成果によりほぼ当初目標は達成できました。また、我が国の高速実験炉「常陽」での照射試験に向けてプルトニウムを含有する金属燃料の試作を行ないました。さらに、金属燃料の射出鋳造法による実用化技術については、ウラン-ジルコニウム燃料について一度に数十本単位で製造できる装置の開発を行ないました(図C 参照)。
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(2) |
長半減期核種の源である超ウラン元素、特にマイナーアクチニド元素を含有させた金属燃料を仏国高速炉フェニックスで照射試験を実施しており、これまでに低燃焼度燃料の照射が終了し、それらの燃料棒の健全性を確認しました。乾式工程で発生する白金族系元素の分離については、長半減期核種テクネチウムの分離法、白金族系核分裂生成物の分離法を開発しました。
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これらの成果は、FBRサイクル実用化戦略調査研究に直接反映され、2005年度に終了した同研究フェーズⅡでは、主概念の先進湿式法・簡便化したペレット状の酸化物燃料製造法に対して、金属燃料・乾式リサイクル技術が補完概念として選定されました。
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