経済社会研究所

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No.41 論文要旨

ハイブリットLCA手法による洗濯機の環境負荷 (1.1 MB)

Environmental life cycle analysis of washing machine with the hybrid LCA method

[キーワード]
ライフサイクル評価、製品、産業連関表、インベントリー分析、環境負荷

内山 洋司 / 西村 一彦 / 本藤 祐樹

本研究は、整合的かつ総合的なインベントリー分析が可能になる産業連関表の利点を生かし、調べようとする製品について構成素材を入力さえすれば、加工・組立といった製造時の複雑なプロセスのエネルギー消費や環境負荷が分析できるインベントリー手法を開発し、その手法を利用して耐久消費財である洗濯機の環境負荷を分析したものである。
開発したLCA手法は、産業連関表を利用して複雑な製造工程のエネルギー消費や環境負荷を明らかにするものであるが、これまでのような製品の金額入力でなく、構成素材の入力により分析できるようにした点に特徴がある。
産業連関表の利用で複雑な製造段階の環境負荷の分析が容易になっただけでなく、これまでの積み上げ法を利用と廃棄の段階に適用していることから、ライフサイクルの各段階についてエネルギー消費や環境負荷の分析が可能である。利用時と廃棄時については、寿命期間、修理回数、エネルギー源などが自由に設定でき、その違いによる分析も可能である。また製品のリユース、素材のリサイクル(マテリアル、サーマル)による環境負荷の改善効果を明らかにすることもできる。
開発した手法を用いて、洗濯機のライフサイクルにわたるエネルギー消費、環境負荷(SOx、NOx、CO2)、労働投入量を明らかにした。結果は、耐用期間中の利用頻度に大きく影響を受けるが、標準的な利用時間(電力消費量:30kWh/年)で計算した場合、エネルギー消費と環境負荷は製造段階が最も大きくなることが分かった。

Priority Serviceの最適メニューに関する条件−確率的に生じる需要を考慮した場合− (351 KB)

Conditions on the Optimal Menu of Priority Service in Markets where both Stochastic and Deterministic Demands Exist

[キーワード]
電力需要、最適メニュー、確率的需要、Priority Service

伊藤  穣

電力需要を供給能力の範囲に抑制することはシステム全体の安全性を確保するために重要なことである。そのため、如何にして電力を効率よく抑制するかが課題となっている。いくつかの方法が望ましいものとして挙げられており、Priority Serviceは電力需要に優先度をつけて、優先度の高いものから順に電力を供給している方法であり、効率的に電力負荷を割り当てることができる手法として注目されている。
これまでの研究により、最適な資源配分を実現するPriority Serviceの料金メニューの条件が示されている。しかし、これらの研究で分析対象となっている需要は、状況の変化にかかわらず存在することが暗黙のうちに仮定されてきた。
しかし、需要にはある状況の下でしか生じないものもある。このように状況の変化に伴って市場に参加し、あるいは市場から退出する需要に関しては分析がなされてこなかった。需要抑制が必要となるのは需要が時間を通じて変動するからであり、変動する需要の分析は大きな意義を持っている。
本稿では需要全体を変動する部分と変動しない部分に分け、このうち変動する部分を明示的に扱うことにより、最適メニューが満たすべき諸条件を再検討するものである。そして需要に変動部分を想定する場合には、従来の「最適メニュー」では最適な資源配分がなされないことを示し、最適な資源配分を保証するためには、理論上、従来よりも厳しい制約条件を満たすことが要請されることを明らかにする。

電気事業におけるパブリックコミュニケーション−価値観、情報の信頼性、住民参加の影響について− (888 KB)

Public Communication on Business Activities of Electric Utility -Values in 90's, Trust in Information, and Participation Effects-

[キーワード]
意識調査、価値観、ボイス効果、信頼

土屋 智子

電気事業の円滑な運営には、安定供給の重要性、電源開発の必要性、経営効率化努力などを訴え、一般社会の理解を得ることが必要である。様々な広報、理解促進活動にも関わらず、昨今、電源立地の長期化、苦情処理の増加など、円滑な事業運営を阻害する事象が生じている。本研究では、こうした事象を電気事業に限らず生じている社会全般の問題と捉え、その構造を明らかにすることを目的としている。
本稿では、研究の一段階として、90年代の一般の人々の価値観や環境・エネルギー問題に対する考え方を明らかにするために行った調査の結果を報告する。価値観は5つのグループに分類され、環境・エネルギー問題に対する考えの類似点と相違点が明らかにされた。また、現状の問題点から、理解促進のために必要な情報提供のあり方について検討するとともに、合意形成における‘参加’の心理的効果について分析し、電気事業と一般社会との「信頼関係」づくりに資する要件について明らかにした。

太陽光発電普及下におけるピークカット効果分析 (506 KB)

Effects of Highly Penetration of PV system for Electricity Supply Configuration

[キーワード]
太陽光発電、ピークカット、負荷率、kW価値

今村 栄一 / 内山 洋司

これまで著者らは太陽光発電(PV)システムの普及拡大のための方策について検討を行ってきたが、PV普及の拡大よる影響についての分析はいまだ十分に行われていない。本論文では電力需要の負荷率に着目しPV普及の影響についてシュミレーション分析と最適分析により評価を行った。将来の負荷率については、人口分布やライフスタイルの変化など種々の社会条件により変化することも考えられるが、本論文ではPVシステム未導入時の負荷曲線を現状の相似拡大として取り扱うことで、PVシステム導入が負荷率に与える影響を明らかにした。
シュミレーション分析の結果、PVが大量に導入された場合、年負荷は大きく改善されるものの、季節により日負荷率の改善効果に大きな違いが生じ、特に冬期ではPV導入により日負荷率の改善が見込めない事が明らかとなった。また、普及過程を考慮した負荷率への影響ではPV普及を加速する施策が実施された場合には普及過程の初期時期から冬期の負荷率の悪化が顕著となり、2005年頃から急激に負荷率は悪化する。
一方、中間期において急激に負荷率が改善されるもの、中間期の負荷率も、PVの普及が12GWpを超える2020年頃から悪化に転じるため、年負荷率の改善傾向は鈍化するが、夏期の負荷率と年負荷率は評価期間中を通じて常に改善する事ができることが明らかとなった。また、最大3日負荷に対する負荷率改善効果がもっとも期待できるPV導入量は導入規模15GWp程度であることが明らかとなった。

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