経済社会研究所

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No.42 論文要旨

複数財対称一般化マクファデン費用関数を用いた費用構造分析- わが国電気事業の垂直統合の経済性 - (950 KB)

Analysis of cost structure by multi-product symmetric generalized McFadden cost function: economies of vertical integration of the Japanese electric power companies

[キーワード]
対称一般化マクファデン費用関数、垂直統合の経済性、可変費用、総費用、電気事業

北村 美香 / 根本 二郎

本研究は、電気事業の発電部門と送配電部門を垂直統合型企業の上流部門と下流部門とし、複数財対称一般化マクファデン費用関数を用いて両部門における垂直統合の経済性を計測する。
その際電気事業が典型的装置産業であるという産業の特徴を考慮して計測を行うため、資本設備が毎期ごとに最適な水準に調整されるわけではないとする仮定の下で、複数財可変費用関数を固定費用関数と同時に推定する。
また、垂直的な費用構造の下での要素需要の重複計算に関する構造的な制約を組み込み、固定費を考慮した総費用に基づくわが国電気事業の垂直統合の経済性の計測とそれに関する考察を行う。

日米産業別内外価格差の計測と要因分析 (1.3 MB)

Sectoral Price Differentials between Japan and US: Measurement and Analysis

[キーワード]
購買力平価、内外価格差、平均費用均等化レート、マークアップ率、規模の経済性、技術進歩、KLEMモデル

白井 誠人 / 門多 治

本稿では、労働、原材料投入に加えて資本、法人税制及びエネルギー投入を明示的に考慮した産業別購買力平価の新しい推計方式を提示し、日米産業別内外価格差の計測・要因分析を行った。
その結果、1990年時点で、中心的な輸出産業の内外価格差(購買力平価/実勢為替レート)は1未満で基準年の73年と比較して90年内外価格差は縮小していること、また、実勢為替レートの長期的な動きは日本の輸出産業の比較優位性により決定されてきたと推定されること、非製造業の多くの業種では基準年と比較して90年内外価格差は拡大していること、第二次石油危機以降、素材産業の一次金属よりも機械産業の自動車、電気機械がより比較優位な産業となり製造業の序列に変化があったことが示された。
内外価格差の変動要因としては、回帰分析の結果、産業別技術進歩率の日米格差が重要であることが判明した。また、生産要素支払の変化が内外価格差の変動に与える寄与度を計測すると、90年時点で、資本とエネルギーよりも労働と原材料の支払変化が価格差を拡大させている産業が多いことなどが明らかとなった。

北陸地域における福祉分野と建設分野との経済効果の比較について−産業連関分析によるアプローチ− (570 KB)

Comparison of the economic effects of welfare service expenditure and that of constraction In Hokuriku : Inter-Industry analysis

[キーワード]
産業連関表、福祉、建設、社会資本生産力効果

堀川 浩市

この論文の目的は、北陸地域における福祉分野と建設分野の経済効果を産業連関分析をもとに試算するとともに、その妥当性を検証することにある。産業連関表を用いての試算では、北陸地域における経済波及効果は、生産誘発額では建設分野の方が、粗付加価値誘発額では福祉分野の方が大きいことが確認できた。
しかしながら、試算にあたっては、用いる指標によって数値が変動することなどの問題点に留意しなければならない。福祉分野の波及範囲は、第3次産業に多く及ぼされることがいえるほか、消費拡大効果や、労働力創出効果などがあると考えられる。
一方、建設分野については、その波及範囲は、地域経済の牽引役である第2次産業にも多く及ぼされることがいえるほか、経済波及効果以外にも社会資本の生産力効果を持ち合わせていることが考えられる。
このように、一分析手法のみで、経済効果を把握し評価することは非常に難しいのが現状である。北陸地域にとってなによりも重要なのは、このような試算や現状を踏まえつつ、将来の北陸の地域像を見据えて、より深い論議の中で、何が地域にとって有益であるかを検討することであろうと考える。

米国におけるダイオキシン類排出規制−1990年修正大気浄化法§129を中心として− (1.3 MB)

Regulations for Dioxins Emissions in United States

[キーワード]
ダイオキシン類、固形廃棄物、大気浄化法、MACT基準、リスク評価

田邉 朋行

ダイオキシン類は、極めて強い毒性を有する化学物質群として認識され、わが国においてもその排出に対する規制の強化が緊急の課題とされている。
1990年に導入された米国大気浄化法におけるダイオキシン類排出規制は以下の特色を有している。
(1)規制の第一段階で「最大限実施可能な汚染防技術」(MACT)に基づく排出基準を適用し、基準策定の困難性に起因する規制の空白を回避するとともに、第二段階で残留する健康リスクに対する評価・是正を行う、規制方式("Technology First, Then Risk")を採用していること。
(2)行政府(EPA)が策定するMACT排出基準に関して、最低要件を法律で規定し、行政府の裁量に一定の制約を課すとともに、その基準策定の根拠を連邦行政命令集(Federal Register)において一般に公表していること。
(3)発生源からの排出等に関する情報の公開を規定しており、これが規制不遵守に対する抑止の一つとして機能している可能性があること。
これらの特色のうち、特に、(1)及び(2)は、来年1月から施行される、わが国のダイオキシン類対策特別措置法の運用等を考えるにあたって、一つの示唆を与え得るものと思われる。

火力・原子力発電所における環境デザインの 歴史的変遷と効果測定 (892 KB)

Environmental Design of Thermal and Nuclear Power Plants:Its History and Effects

[キーワード]
火力・原子力発電所、環境デザイン、歴史的変遷、効果測定

山本 公夫

発電所と地域環境との共生を実現していくために、代表的な環境共生方策である景観や緑化、環境施設のデザインの歴史的変遷を整理し、今後の環境共生の方向性を明らかにした。さらに、地域のシンボルとなり得るような地域景観創造型のデザイン案について検討し、それらの景観デザインが人々に与える効果を計量心理学的実験より定量的に明らかにした。

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