経済社会研究所

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No.47 論文要旨

有害大気汚染物質を巡る規制スタイルの日米比較
−我が国大気汚染防止法への政策的含意を求めて−
(1.3 MB)

Analyses of Divergent Regulatory Styles on Hazardous Air Pollutant Controls in Japan and the U.S.: A Comparison with Policy Implications for Japanese Air Pollurtion Law

[キーワード]
有害大気汚染物質、大気汚染防止法、Clean Air Act、Political Chemical

田辺 朋行 / 青木 一益 / 杉山 大志 / 田中 伸幸 / 横山 隆壽

(1)Kagan(2000)らの日米比較法制度の実証研究は、金融規制、労働市場規制等の実施・執行過程の日米比較をケース・スタディーとして、「マニュアル的な規制執行や訴訟を多用する米国に対して、行政裁量や行政指導を重視する日本」等、といった「米国=形式主義、律法主義、敵対的」「日本=非形式主義、非律法主義、非敵対的・協調的」という両国の規制スタイル(National Style of Regulation)の違いを、そこに見てとれることを実証した。本研究において、法の執行過程のみならず、政策決定過程を含む規制システム全体の比較に適用し、その分析を試みた。その結果、有害大気汚染物質に関する同種の政策課題の克服・具体化の過程の日米の相違もまた、Kogan(2000)らの示した分析枠組みによって説明できることが示された。
(2)このように、両国における有害大気汚染物質法規制の相違は、日米の規制スタイルの違いを反映したものであって、その優劣を一義的に判断することはできない。しかしながら、米国の規制スタイルにみる「形式主義、律法主義、敵対的」側面が、我が国法制度の欠点を補完する局面もある。本研究では、特に、我が国の規制スタイルにおける広範な行政裁量が、特定の化学物質が政治問題化した場合等において、規制値策定にあたっての科学的知見と政策議論との混同を招きやすいことを指摘し、その解決方法として、規制策定過程における手続の確立と透明性の確保が必要であることを示した。

環境と両立しうる電力市場再編− (858 KB)

Competition Compatible with Environment in Electric Power Market

[キーワード]
電力自由化、原子力発電、財政メカニズム、炭素税、グリーン電力

兼平 裕子

規制緩和による経済的競争の激化は、エネルギー・環境問題にはマイナスに作用する。自由な競争による経済発展と資源・環境調和型社会を両立させる政策が必要である。
民間企業による自由な競争が拡大していくと短期的視点重視となることは避けられず、今後は国境や各エネルギー産業間の垣根をこえた競争・集中が起きると考えられる。これまでは民間電力会社が政府のエネルギー政策を実行し、電気事業法による規制を受けてきた「電力市場」であったが、地球環境保全を視野に入れた費用負担の方法について共通のルールを踏まえた上での自由な競争の拡大を目指すべきである。
具体的には原子力と再生可能エネルギーの扱いが焦点となる。今後も原子力を維持する政策を続けるなら政府の関与が必要となる。パブリック・アクセプタンスを得られるなら税金の投入も考慮すべきである。
再生可能エネルギーは普及のための政策として電気料金体系内での財政メカニズムを織り込む必要があるが、これらも暫定的な方法である。再生可能エネルギーと化石燃料源との価格差を誰が負担すべきかという問題に大しては税の果たす役割を無視できない。2008年〜2010年の京都議定書の公約期限をめどにした完全自由化を前提とすると、グリーン電力市場の開設も可能となる。消費者の選択可能な電力市場の創設が環境と両立可能となる仕組みとして税制のグリーン化による財政メカニズムの導入が必要となる。

自家発電事業者と電力会社の効率的連系について (858 KB)

Efficient Power Interchange between Self Generation Plants and Utilities

[キーワード]
電気事業、自家発電、自家発補給電力契約、リアル・オプションエクスチェンジ・オプション

笹井 均 / 鳥居 昭夫

本論文では、自家発電事業者と電力会社による発電の間の最適発電分担を実現するための制度設計について論じる。自家発電を行う事業者と電力会社との契約に工夫を施すことによって、自家発電を行う事業者を含んだ全体としての発送電システムを、現在のシステム下で実現されるより効率的にすることが可能である。
効率化が可能な理由は、自家発電の限界費用の短期的変動が電力会社の限界費用変動に比べて大きい場合には、融通取引を行うことによって発電の社会的総費用合計を節約できる可能性があるからである。
この論文では、さらにこの社会的費用の節約分を定量する方法を提示することによって、合理的な料金制度はどうあるべきかという問題を論じる。その結果、電力事業者と自家発電事業者との間の効率的な契約形態はexchange optionのbundleであることが示される。最後に、燃料市場の価格が幾何ブラウン運動をするときを例として、融通取引における最適な基本料金を算出する。

高速道路網の整備が地域間交易構造に及ぼす影響 (855 KB)

The Impacts of Future Highway Network on Interregional Trade Structure

[キーワード]
地域間産業連関表、地域計量経済産業連関モデル、地域社会資本

山野 紀彦

本稿では、電力会社の供給区域に対応した地域間産業連関表を用いて多地域計量経済・産業連関モデルを構築し、今後の地域間交通ネットワークの整備が各地域の産業構造に与える影響について分析する。
現在、計画されている高速道路が全て整備されたとしても、全国平均的には大幅な地域間移動時間の短縮にはつながらないが、地域別産業別にみると特に北関東、首都圏、北陸及び四国といった地域で産業構造が大きく変化する可能性がある。
高速道路の整備の優先順位を変更したシミュレーションを実施した結果、既存の高速道路網における各地域の地理的条件や産業構造の違いにより、新たに整備される高速道路距離の移動時間短縮による経済効果は、地域により大きく異なることが明らかになった。

日、米、アジア経済の相互依存の深化について (834 KB)

On the Deepening Interrelationships among Japan,the US and Asian Economies

[キーワード]
国際リンケージ、構造変化、アジア経済、国際産業連関表

櫻井 紀久 / 森泉 由恵

中国などアジア経済の発展や日本経済との相互依存関係の深化に伴い、アジア経済の動向分析は日本経済の将来展望を行う上で重要な課題である。本稿は、アジア国際産業連関表(1985、1990、1995年)を用いて、日本、アメリカ、アジア諸国における貿易構造の変化や相互依存関係の変化について定量的分析を試みる。
分析結果によれば、日本、アメリカとアジア経済の相互依存関係は一層緊密化する一方、アジア諸国内でのリンケージも高まっていること、同時にアジア経済は、それ以外の地域とのリンケージも深めていることが明らかになった。

デフレスパイラルに陥った日本経済 (539 KB)

Japanese Economic Recession with Deflation Spiral

[キーワード]
物価、デフレーション、要因分析

林田 元就

本稿では、デフレーション、デフレスパイラルについての論点整理を行った上で、デフレーションの影響をデータにより検証した。
この結果、製品価格上昇の抑制や実質金利上昇などのデフレ圧力が企業収益を圧迫し、それが、賃金、雇用の削減を通じて家計の消費支出を減少させていることがわかった。

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