社会経済研究所

日本経済と電力需要の短期予測

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2017年12月6日 公表

2017〜2019年度 販売電力量の短期予測(2017年12月)
−電力需要は4年連続のプラスも、経済成長の鈍化により伸びはゼロ近傍へ−

本資料は、当所が11月22日にプレスリリースした「2017〜19年度日本経済の短期予測」による経済予測を前提として実施した、19年度までの販売電力量(電気事業者計)の短期予測の結果を紹介するものである。

販売電力量の動向と予測結果

  • 直近の動向:17年4〜6月期の販売電力量(実績)は前年比1.2%増の1,969億kWhであった。7〜9月期(見込み)は同0.3%増の2,233億kWhと5期連続の増加となるが伸びは大きく鈍化する。気温が前年に比べ低く推移したこと、天候不順による生産活動の一時的な弱まりなどが鈍化の要因として挙げられる。
  • 17年度予測:日本経済の標準予測と16年度並みの気温を前提とすると、17年度下期の販売電力量は、経済成長の持続を背景に前年比1.1%増の4,383億kWhと上期の同0.7%増から伸びを高める。この結果、17年度の販売電力量は前年度比0.9%増の8,585億kWhと2年連続して増加する。内訳では、電灯が同0.5%増、電力(電灯を除く販売電力量)が同1.1%増を見込む。
  • 18〜19年度予測:18〜19年度の販売電力量は、原油価格の上昇に伴う電気料金の相対的な上昇と、在庫調整に伴う循環的な経済成長の鈍化を反映し、前年度比1.2%増から同0.3%増へ伸びが低下する。内訳では、電灯が同1.7%増から同 0.7%増へ、電力が同1.0%増から同0.1%増へ鈍化する。
  • 気温シミュレーション:標準予測では気温は前年並みで推移するとしたが、18年度の気温が「猛暑(10年度)・厳冬(11年度)」あるいは「冷夏(09年度)・暖冬(06年度)」となった場合の影響を試算した。猛暑・厳冬の場合(図2)、18年度の販売電力量は+2.8%(乖離率+1.5%、乖離幅+134億kWh)まで伸びを高めるが、冷夏・暖冬の場合には0.0%(同-1.2%、同-104億kWh)となる。気温動向によっては販売電力量の伸びが止まる可能性がある。

表1 : 販売電力量の標準予測

図1:販売電力量(前年度比寄与度)

図2:販売電力量の気温シミュレーション(前年度比)

円高・原油高が販売電力量へ及ぼす影響

  • 当所は11月22日に「2017〜19年度日本経済の短期予測」を公表した。そこでは円高や原油高が日本経済に及ぼす影響を試算したが、 本資料では、それが販売電力量に及ぼす影響を紹介する。
  • 為替円高の影響:円高は、円建て燃料価格の低下に伴う電気料金の相対価格の変化を通じた経路と、 輸出の減少に伴う国内生産や家計所得の縮小を通じた経路の両面から、販売電力量に影響を及ぼす。 その結果を18年度でみると、標準予測に比べ円高が10%進んだ場合、販売電力量は同0.3%減少する(表2 ①)。 しかし、内訳でみると、電力(標準予測比0.5%減)は減少するが、電灯(同0.0%増)は僅かながら増加する。 この相違は、相対価格を通じた影響が両者で異なるために生じている。 つまり、電力の相対価格(電気料金÷円建て原油価格)は上昇し、需要を減少させる要因になるのに対し、 電灯の相対価格(電気料金÷ガス料金)は低下し、需要を増加させる要因になる。 電力は、生産要因と相対価格要因の両者がマイナスに作用し、結果として減少する。 一方、電灯は、所得要因によるマイナスを相対価格要因によるプラスが相殺し、結果として増加するのである。
  • 原油価格の高騰:原油高(標準予測比50%上昇)は、燃料価格の上昇に伴う電気料金の相対価格変化を通じた経路と、 名目輸入の増加による名目所得の減少と国内価格上昇による実質所得の減少を通じた経路という2つの側面から、 販売電力量に影響を及ぼす。結果を18年度でみると、通関原油価格が標準予測に比べ50%上昇した場合、 販売電力量は標準予測に比べ0.3%減少する(表2 ②)。 内訳では、電灯が同0.5%減、電力が同0.2%減である。 電灯は、所得要因、相対価格要因ともに需要を減少させる要因として作用する。 電力は、相対価格要因は需要を増加させる要因として作用するものの、生産要因による需要を減少させる力が大きく、結果として減少する。

表2:円高・原油高が販売電力量へ及ぼす影響

予測の詳細はPDF版をご覧ください。

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