
当研究所の経営層による寄稿やインタビュー記事等を紹介しています。
電力中央研究所 理事長 平岩 芳朗
系統接続ルールの変更
AI(人工知能)が急速に社会に組み込まれている。大規模なデータセンター(DC)が急増する米国ではDCの電力需要が急増し、DCの系統接続と系統増強費用の負担、電気料金への影響と地元の反発などが社会問題化している。
我が国でも急増する系統接続申請の課題に対し接続ルールの変更が開始されつつあるが、海外事例などから今後参考となるルールや技術的課題について概説したい。
系統接続を申請するDCの中には実現性が不透明なものも少なからず含まれており、すべてを真の需要として対応すると過剰な設備投資となり得る。米国や英国では接続申請時に高額の保証金を徴収し、建設予定地の所有権確保を義務付けるなど、接続申請への対応を「早い者から」から「準備できた者から(First Ready First Serve)」に移行したり、手続き進行中でもマイルストーンを達成できない計画を強制的に解約する動きがある。
系統混雑時の調整力提供を前提に優先的な接続枠を与えたり、ノンファーム接続を需要側にも適用することは、DCの早期稼働を促す有効な手段となり得る。一方、バックアップ電源の常時稼働は法規制との整合が必要だ。系統混雑時などに、どのDCからどの程度負荷を抑制するかという優先順位や、免責規定に関する法的整理なども必要となる。
FERC(米国連邦エネルギー規制委員会)はDCの系統接続に要する増強費用(特定方法も課題だが)を一般需要家に転嫁しない方策を講じることを管轄下の系統運用者に命じた。プロジェクトが計画通り進まない場合や、DCの稼働率が高まらない場合の最低料金制は、設備増強費用の座礁化を避けるために用いられている。
DCのワークロード処理やDC事業者によるオンサイト電源の運用の結果、系統需要が乱高下する懸念がある。これらDC内の需要面の動きが見えない系統運用者にとって系統需要の予測が困難化する結果、LFC(周波数制御)運用や必要予備力確保などの実運用の困難化が懸念される。アイルランドでは大規模なDCに自ら電源保有を求め、保有電源を卸電力市場に参加させるなど、系統運用者から見える形にする動きがある。
フリッカ現象招く恐れ
我が国は需給バランスを30分単位の電力量で管理しているが、DCはビット情報の移動で数十万kW規模の負荷が瞬時に変化し、国家間や広域エリア間で移動し得る。予期せぬワークロードシフトは地域間連系線などに予期せぬ実潮流変化をもたらすため、DCの需要状況の変化やシフト計画をリアルタイムで共有する広域的仕組みが構築できるかが課題となる。
大規模なAI学習の開始・終了時やバッチ処理の切り替え時に、数十万kW規模の矩形波状の短周期の負荷変動により系統電圧が乱れるフリッカ現象や、周波数・電圧の品質低下が懸念される。また、DC内部の膨大なインバーターや電源回路から発生する高調波の周辺の一般需要家や精密機械への波及を防ぐため、系統側対策だけでなく、DC事業者にも一定の電力品質を維持する設備の設置を義務付けるグリッドコードが必要だ。
1拠点数十万kW、海外では百万kW級のDC建設が相次ぐ。系統事故による電圧変動やDC内の全系遮断により、この大規模負荷が瞬時に系統離脱すると周波数が上昇し、周波数調整機能で吸収しきれない場合、保護装置の動作により電源などが連鎖的に脱落し最悪の場合、大規模停電につながりかねない。
ニーズ・運用相互理解を
このため、DCに周波数・電圧変動に対する適切な系統連系維持能力を求めるとともに、大規模負荷脱落(周波数上昇)に対する瞬時調整力の確保など、新たな運用規程が必要と思われる。米国では大規模負荷にNERC(北米電力信頼度協議会)への登録を求め、一定範囲の系統条件での系統連系維持を求める動きがある。
現状、系統運用者はDCの運用は想定できず、DC事業者は系統運用の課題は分かりにくい。DC事業者と系統運用者が、お互いのニーズや課題意識、運用の考え方を理解し、解決策を見いだしていく必要がある。電力中央研究所としても貢献してまいりたい。
日刊工業新聞 2026年8月3日掲載
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