電力中央研究所

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日刊工業新聞

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研⑩
送電線遠隔監視を効率化

山間地・地下から異常通知

 一般送配電事業者では、巡視・点検業務の労働力不足や設備の高経年化が進み、作業の効率化や不具合対応の迅速化が課題となっている。このため、情報通信技術(ICT)を活用した遠隔監視の取り組みが注目されている。監視対象となる電力流通設備のうち、送電設備の多くは、山間地や地下など、商用電源や公衆通信網の利用が困難な場所に点在しており、電源、通信網の確保が大きな課題である。電力中央研究所では、これらの架空および地中送電設備の設置環境に対応するため、遠隔監視のためのセンシング技術に加え、遠隔監視に必要な電源、通信技術の開発を進めている。さらに、これらの技術を組み合わせた送電設備の保守支援システムの構築にも取り組んでいる。

 架空送電線の異常や劣化などにより生じる温度上昇を監視する保守支援システムを開発した。このシステムでは、送電線から発生する環境磁界を利用した電源技術、長距離通信により公衆通信網と連携する無線通信技術、赤外線画像から温度異常を検知するセンシング技術を組み合わせて構築している。500 kV 送電用の鉄塔にシステムを設置し、5カ月間のフィールド実験を実施した。実環境においても設計通りに動作することを確認し、現場への適用の見込みを得た。

 また、地中送電ケーブルの接続部の劣化を示す部分放電を監視する保守支援システムを開発した。このシステムでは、ケーブル近傍に発生する磁界を利用した電源技術、マンホール内と地上間を安定した通信が行える技術、センサーにより取得した膨大な監視データを圧縮・復元して効率的に扱う技術を組み合わせて構築している。マンホール内と地上間の通信においては、マンホールふたによる遮蔽(しゃへい)、通行車両や降雨などの電波伝搬損失の評価結果を踏まえて設計・構築した。66 kVの地中送電ケーブルが設置されたマンホール内において6カ月間のフィールド実験を実施した。冠水や腐食の影響がある実環境でも設計通りに動作することを確認し、現場への適用の見込みを得た。なお、監視画面では、ケーブルの温度の情報や部分放電のデータを簡単に確認できるようになっている。

 保守支援システムは、地中配電ケーブルなど他の電力流通設備にも適用できる。システムに含まれる電源や通信技術は、商用電源や公衆通信網が使えない環境において単独でも活用できる技術となっている。電力流通設備の巡視や点検業務の効率化、省力化の実現に向けて、さらなる研究開発を進めていく。

図

架空送電設備での遠隔監視の例

著者

椎名 健雄/しいな たけお
グリッドイノベーション研究本部 ファシリティ技術研究部門 主任研究員
2016年度入所、専門分野は電磁環境、博士(工学)

日刊工業新聞(2026年3月5日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

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