
セメント・コンクリート産業からの二酸化炭素(CO2)排出量は、世界の総排出量の約8%を占めており、日本でも国内CO2総排出量の約4%がセメント製造に由来する。カーボンニュートラルの実現に向けた対応が急務となる中、CO2をコンクリートに固定する技術が注目されている。大気中のCO2がセメント水和物と反応して炭酸カルシウム等の炭酸塩を生成する「炭酸化」を積極的に活用し、コンクリート中にCO2を閉じ込めるものである。この技術の社会実装にあたっては、固定されたCO2量を正確に定量する評価技術の確立が前提となる。しかしながら、CO2定量に用いる各評価技術の精度や適用範囲は体系的に整理されておらず、評価基盤の構築が課題であった。
電力中央研究所(電中研)は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」に参画し、CO2固定量の評価技術開発に取り組んでいる。同事業の開発項目としてCO2を大量に固定する新材料の開発が進んでおり、その環境効果を客観的に裏付ける定量評価が求められている。電中研では、NEDO事業の取り組みとして、原理の異なる4つの評価技術を比較検討した。加熱時の質量変化からCO2量を算出する熱重量分析(TG-DTA)、酸分解により発生するCO2を滴定で定量する湿式分析、試料を加熱しCO2を赤外線で検出する方式のTOC分析、発生ガスを質量スペクトルで同定する飛行時間型質量分析(TOF-MS)である。炭酸化したコンクリート・モルタルなどさまざまな試料を用いて検証した結果、4手法いずれにおいても高い定量精度を確認し、CO2固定量を正しく測れることを実証した。
評価技術の一つであるTOF-MSの装置外観
4つの評価技術にはそれぞれ得意分野がある。TG-DTAは高精度で炭酸塩の種類も区別できる。TOC分析は1日に数十検体の自動連続処理が可能であり大量試料の評価に適する。湿式分析は高額な装置を要せず導入が容易である。TOF-MSはCO2以外のガス種も同時検出でき反応メカニズムの解析に力を発揮する。目的やコストに応じて最適な手法を選択できる体制を整備したことが本研究の成果であり、実用化段階での品質管理や環境価値の評価への展開も見据えている。
電中研は今後、学協会と連携し評価技術の標準化を進めるとともに、国際標準化にも取り組み、CO2固定コンクリートの価値を客観的に証明する技術の確立に貢献する。
本研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の業務委託(JPNP21023)の一環として行ったものです。関係各位に感謝いたします。
日刊工業新聞(2026年3月19日)掲載
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