電力中央研究所

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日刊工業新聞

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研⑯
系統混雑を考慮した解析

制約下の条件作成支援

 2050年のカーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギー電源(再生エネ)の導入が進む中、送電線の容量制約により発電設備の運用に制約が生じる「系統混雑」への対応が重要な課題となっている。この課題への根本的な対策としては、送電設備の増強が挙げられる。

 しかし、設備増強には多額の費用と長期の準備期間を要する。そのため、既存の送電設備を最大限活用し、再生エネの出力制御を最小限とするような運用が一般送配電事業者に求められている。さらに、その運用の実現手段として、市場主導型の混雑管理の導入検討も始まっている。このような運用や制度設計を検討するために、発電コストや送電容量制約などを考慮しながら電力の流れ(潮流)を計算できる最適潮流計算(OPF:Optimal Power Flow)の重要性が高まっている。

 電力中央研究所は、1970年代より電力系統解析用のソフトウェアパッケージ「CPAT」を開発しており、国内の電気事業において広く利用されている。現在、長年の開発によって複雑化したCPATのプログラム全体を一新するリニューアル開発を進めている。

 一方、OPFは、これまで研究用途として開発してきたものの、CPATのようにソフトウェアパッケージとしては提供してこなかった。そこで、系統運用者における利用ニーズの高まりを見据え、リニューアル版CPATと連携した直流法最適潮流計算(DCOPF: Direct Current OPF)プログラムを開発した。このプログラムにより、送電容量などの制約を考慮したDCOPFの解をもとに発電設備の出力条件を作成できるようになった。DCOPFは、地点ごとの電力の価値を示す地点別限界費用(LMP)の算出も可能であり、従来のCPATでは扱えなかったコスト面を含む評価への活用も期待できる。

図

開発したDCOPFプログラムの位置づけ

 加えて、上記開発プログラムでは、通常のDCOPFでは無視される送電ロスを推定して計算に含める機能を実装しており、潮流状態をより正確に評価できる。また、送電容量制約を満たせないデータを入力した場合でも、最適解が求まらないことを出力するのではなく、同制約の違反量を含んだ解を算出する機能を実装し、利便性を向上させている。

 再生エネの導入と電力の安定供給を両立するためには、電力系統の特性や制約を適切に評価するための解析技術が不可欠である。今後も電力中央研究所は、電力系統解析技術の研究開発を通じて、電気事業の課題解決と脱炭素社会の実現に貢献していく。

著者

野本 悟史/のもと さとし
グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術研究部門 主任研究員
2016年度入所、専門分野は電力系統の実効値解析

日刊工業新聞(2026年6月25日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

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