電力中央研究所

一覧に戻る

日刊工業新聞

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研⑰
配電系統総合解析ツール

複雑な検討業務を効率化

 カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ、CN)の実現に向けて、送配電系統に再生可能エネルギーの導入が進んでいる。特に太陽光発電システム(PV)は、配電系統に多く連系しており、住宅用PVからメガソーラーのような大規模設備まで普及が拡大している。これらの設備からの逆潮流による電圧上昇や昨今ではPV導入拡大による電圧低下などが課題となっている。

 さらに、電気自動車(EV)の急速充電、系統用蓄電池の充放電、データセンターなど新たな大規模設備の増加により、配電系統の潮流や電圧分布は複雑化していくことが予想される。

 このような状況では、個別設備の影響評価にとどまらず、配電用変電所、配電線、需要家、分散型電源、電圧制御機器を含めた系統全体の電力品質を総合的に把握することが重要である。

 電力中央研究所では、複雑化する系統解析業務を効率化するため、設備データや計測データを活用し、数値計算により配電系統の状態を評価する配電系統総合解析ツールとして「CALDG」を開発している。

 同ツールは、再生可能エネルギーや負荷の新設時における電圧、潮流、電流などを定量的に評価し、配電設備の運用・計画、電圧対策、系統解析業務を行うことが可能である。

図

CALDG画面表示のイメージ

 CALDGでは実配電系統の構成要素を反映したモデルと多様な解析機能を統合している点が特徴である。配電用変電所や高圧配電線を設備データに基づいてモデル化し、各ノードの電圧、ブランチを流れる電流、有効・無効電力を算出できる。解析結果は構築した系統モデル上に描画されるため、順潮流・逆潮流時の電流方向や電圧分布を視覚的に確認できる。

 また、管理値に応じて電圧逸脱や電流超過箇所などの色彩を変更することで、検討が必要な箇所を直感的に把握できる。対策検討のために配電線に設置される対策機器のモデルがCALDGには実装されており、「LRT」や「SVR」などの電圧制御機器をはじめ、「SVC」などの無効電力制御機器などの対策機器がモデル化されており、これらの機器を地図上に設置することで、再生可能エネルギー導入時の電圧対策や制御機器の動作影響を評価できる。

 加えて、負荷や分散型電源には時系列プロファイルを設定でき、負荷変動やPV出力変動を考慮した解析も可能である。

 今後も、系統用蓄電池やEVなど新たな設備の導入拡大により、複雑化する配電系統の運用・管理を支える実用的な解析ツールとなるために、機能拡充と利便性向上を図っていく。

著者

高橋 尚之/たかはし なおゆき
グリッドイノベーション研究本部 ENIC研究部門 上席研究員
2015年度入所、専門分野は電気

日刊工業新聞(2026年7月9日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry