電力中央研究所

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日刊工業新聞

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研⑲
熱水流動シミュレーション

地熱開発の可能性を評価

 温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けて、再生可能エネルギーへの期待が高まっている。その中でも地熱発電は、地下から取り出した熱水や蒸気を利用して発電を行うため、天候に左右されず安定した電力供給が可能である貴重な国産エネルギーである。

 しかし、地熱資源は地下数百から数千メートルの深さに存在するため、実際に高温の熱水が地下のどこを流れ、どこに蓄えられているのかを直接見ることはできない。地熱開発を進めるためには、地下で起きている現象を理解する技術が欠かせない。

 このような課題に対し、電力中央研究所では、地下の熱水の流れを広域的に明らかにするための熱水流動シミュレーションに取り組んでいる。シミュレーションを行うためには、まず地下構造を表現した3次元モデルを構築する必要がある。

 そのため、地質調査やボーリング調査に加え、地下を非破壊で調べる物理探査の結果を活用する。地熱分野では重力探査と電磁探査といった物理探査手法がよく利用される。重力探査は地表で観測される重力値のわずかな違いから、地下の岩盤構造や断層の位置を推定することができる。

 電磁探査では地下の電気の通りやすさを調べることで、熱源の存在や、熱水を地下に閉じ込めるキャップロック(不透水層)の分布を推定することが可能である。さらに、地質情報や既往研究を参考に、岩石の種類や熱の伝わりやすさ、水の流れやすさといった地下の性質を3次元モデルに反映する。

 こうして構築した3次元モデルに対し数万年スケールの熱水の流れを計算することにより、地下深部で加熱された熱水が断層や高透水性の構造を通って上昇し、周囲へどう広がるかを解明することができる。

図

 さらに、生産井戸や還元井戸を設定することで、どの程度の熱水を汲み上げられるかといった地熱資源のポテンシャル評価や、継続的な生産を行った場合に、将来どの程度まで生産を維持できるのかといった持続性評価も可能である。

 現在は、地下の熱水流動シミュレーションとプラント側の発電量計算を連結させることで、地下からどれだけ熱水を生産できるかだけでなく、それによってどの程度の電力を生み出せるか、さらには発電に伴って地下の熱水流動や温度分布がどのように変化するかを一体的に評価することを目指している。

 将来的には、従来型の地熱資源だけでなく、人工的に地下に亀裂を造成して熱を回収するEGS(Enhanced Geothermal Systems:地熱増産システム)といった次世代型地熱技術への適用も視野に入れている。

著者

森藤 遥平/もりふじ ようへい
サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門 主任研究員
2018年度入所、専門分野は物理探査、地熱

日刊工業新聞(2026年8月6日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

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