電力中央研究所

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日刊工業新聞

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研⑳
小規模発電 DX支援

発電所の異常を早期検知

 近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、地熱発電やバイオマス発電、環境センターや工場の廃熱を利用した発電など、比較的小規模な発電所が全国各地で運用されている。

 これらの発電所では、熱源の状態が時間帯や日ごとに大きく変動するため、安定した運転管理や設備性能の正確な把握が難しいという課題がある。

 一方で、運転管理の省人化・遠隔化やトラブルの未然防止に対するニーズは年々高まっており、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した高度な運転監視技術の重要性が増している。

 小規模発電所では、限られた人員で設備を管理しているケースが多く、現場での点検や経験に基づく判断に依存しがちである。そのため、設備の性能低下や初期段階の異常といったわずかな変化を見逃すリスクが存在する。特に地熱発電のように運転条件が常に変動するプラントでは、単純な数値監視だけで異常の兆候を捉えることは容易ではなく、設備全体の状態を総合的に把握できる仕組みが求められている。

 こうした課題を解決するために電力中央研究所が開発したのが、プラント性能評価・監視ツール「eXpert Family」である。eXpert Familyは、IoTを活用して発電所の運転データを収集し、遠隔から常時監視を行うとともに、システム解析や機械学習に基づくデータ解析によって異常の兆候を早期に検知し、運転管理者へ通知する機能を備えている。

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 また、発電所全体のエネルギー収支解析を実施することで構成機器ごとの性能を把握でき、日常的な運転管理から中長期的な性能評価まで幅広く支援する。

 さらに、eXpert Familyは新設プラントだけでなく、既設プラントで運用されている他社製の運転管理ツールとも連携可能であり、既存設備を活用しながら導入できる点も特長である。

 実績として、eXpert Familyは既存1,500kW級の地熱発電所に2024年に導入され、同発電所の設備の維持管理に活用されている。

 今後は、さまざまな発電方式や設備構成への適用を進め、より多様な現場で活用可能な運転支援ツールへと発展させていく予定である。また、AI解析技術のさらなる高度化により、異常検知精度の向上や予兆保全機能の強化を図り、発電設備の安全性向上と運転コスト削減に貢献することを目指している。

 eXpert Familyは、現場の負担を軽減しながら、安心かつ効率的な発電所運営を支える基盤技術として、今後も進化していく。

著者

中尾 吉伸/なかお よしのぶ
エネルギートランスフォーメーション研究本部 プラントシステム研究部門 上席研究員
2004年度入所。専門分野は機械工学、伝熱工学、博士(工学)

日刊工業新聞(2026年8月20日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

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