電力中央研究所

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日刊工業新聞

確かな価値の創出に向けて 挑む電中研㉑
電化厨房の省エネを実現

特長生かす換気量を解明

 社員食堂やレストラン、給食センターなどに設置される業務用厨房では、年間を通じて冷暖房を行うことが一般的である。一方で、その換気量は住宅居室の約100倍に及ぶ。換気によって厨房内を冷却・加熱した空気を排出するため、換気量が大きいほど空調エネルギー使用量も増える。

 電化厨房(ちゅうぼう)は燃焼排ガスがなく、機器の発熱も少ない。建築基準法上の火気使用室にも該当しないため、換気量を低減できる可能性が指摘されてきた。

 ただし、減らし過ぎると、調理時に発生する熱や湯気を排気フードで十分に捕集できず、フード外表面や天井に結露が生じる恐れがある。水滴が調理物に落下すれば、衛生上の問題にもつながりかねない。従来の換気設計基準では、電化厨房でも燃焼厨房と同じ換気量となり、電化厨房の特長が生かされていなかった。

 そこで電力中央研究所(電中研)は、業務用電化厨房の必要換気量を明らかにするため、換気量や給気温湿度を高精度に制御できる実験設備を開発した。業務用厨房は調理内容に応じて機器の種類や発熱特性も異なるほか、排気フードの形状や機器との位置関係も多様である。

 その組み合わせは膨大だが、約10年にわたり1000ケース以上の実験を重ね、熱や湯気を適切に捕集するために必要な換気量を明らかにした。

 これらの成果は、一般社団法人日本エレクトロヒートセンターが2017年に制定した「業務用電化厨房施設の換気設備設計指針(JEHC103-2017)」の策定に活用された。同指針は主に1回当たり200-700食程度を提供する厨房を対象としている。

 指針制定後、2020年10月に電中研我孫子地区で同指針により設計された厨房施設を備えた職員食堂がある本館が竣工した。この厨房は、計画段階から同指針を採用した第1号物件である。設計換気量は従来基準と比べて約半分となった。

図

我孫子地区本館 厨房(左)職員食堂(右)

 運用開始からまもなく6年を迎えるが、換気量を抑えても厨房内の温熱快適性に問題は生じていない。さらに、従来の換気設計と比べ、空調消費電力量は年間15.9MWh削減されることが分かった。

 これは一般的な戸建住宅3-4軒分の年間消費電力量に相当する。削減量だけを見れば、大きくないとの見方もあろう。しかし、設計初期に換気量の考え方を見直すだけで、継続的な省エネルギー効果が得られる意義は大きい。実際、電中研の事例を参考に同指針を採用する動きも出ている。

 今後も温熱快適性や衛生性を確保しながら省エネルギーを実現する業務用電化厨房が広がることに貢献していきたい。

著者

岩松 俊哉/いわまつ としや
グリッドイノベーション研究本部 研究統括室 兼 ENIC研究部門 上席研究員
2010年度入所。専門分野は建築環境学、博士(環境情報学)

日刊工業新聞(2026年9月3日)掲載
※発行元の日刊工業新聞社の許可を得て、記事をHTML形式でご紹介します。

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