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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (194)

行動科学やデータをどのように活用すれば、
省エネサービスを改善できるか?(第3回)
IoTで行動観察 電気利用の特徴把握

 IoTセンサの普及により、家庭内での生活行動を把握できるようになりつつある。前2回(10月9日・16日)に続き今回は、環境省ナッジ事業下の電中研参画プロジェクトの中から、IoTセンサを用いた家庭内での電気利用の観察に関する実証を紹介する。

【電気利用の実態を知る方法】

 省エネに限らず節約の達成には、支出の把握とその必要性を吟味することが大切である。しかし電気は、無意識な利用も多く、実態把握が困難で、スマートメーターを用いても合計量しかわからない。たとえ、機器ごとの電気利用が把握できたとしても、その機器を利用した理由までは把握できない。そこで「行動観察」の出番となる。行動観察は、調査者が実際に生活環境などの「場」で観察し、人の活動を定性的にとらえる手法である。無意識の行動も把握し、サービスの潜在的ニーズや省エネを妨げる課題の抽出も可能である。

【IoTセンサによる行動観察】

 しかし、家庭内に調査者が長期間入り込むことはハードルが高く、現実的には小規模な観察しか行えない。そこで当所は、IoTセンサと事後インタビューを組み合わせた行動観察方法を考案し、実証で用いた。センサ装置を設置するだけなので、観察のハードルははるかに低い。当所が開発したIoTセンサは「おうちモニターキット(OMK)」(図)と呼び、家全体の消費電力、エアコンの消費電力、室温などを取得し、リアルタイムに表示する。センサ計測とリアルタイムの情報提示は、無意識な電気利用に意識を向ける効果を持つ。実証では、母親がOMKに表示された消費電力の大きさを見て、子供部屋のエアコンの消し忘れに気づくなど、省エネ支援ツールとして有用となる可能性も示された。
 事後インタビューでは、記録したセンサデータを利用量の大小で色分けし、時間×曜日で可視化した図を用いた。図を見せながらインタビューをすると、生活パターンや非日常行動を思い出すのが容易になる。そのため、電気利用の背後にある価値観や省エネ行動の障壁などが、多数抽出された。例えば、早起きの猫のため3時に暖房をつけるなど、独特な価値観が得られた。このような需要家には猫の健康に役立つ省エネアドバイスを伝えるなど、個人の価値観に即した省エネアドバイスが大切である。

【各家庭に適した省エネサービスに向けて】

 さらに行動観察を進めた結果、各自の「損得への感度の違い」に応じたメッセージをOMKで伝えることで、省エネを促進できる可能性が示された。実験では、事前テストでモニターの傾向を調査し、例えば損を回避する傾向の強い人には「〇〇をしないと□円損しますよ」といったメッセージを伝えた。結果、省エネ行動につながったモニターも多かったが、反感を持ったモニターもいた。例えば、家電利用の推定精度が低いことが原因で、エアコン未使用時に温度変更を促すなど、メッセージが不適切な場合には反発が生じた。また「地球環境保護のため」など過大な表現や、誰にでも当てはまる省エネメッセージは、自分事として感じられず反発に繋がった。
 郵送省エネレポート(第1回)、スマホアプリを用いた省エネ情報提供(第2回)、今回の個人特性に応じたメッセージ提供と、パーソナル化が進むほど省エネ促進効果は高まりうるが、メッセージへの抵抗感が強まるリスクもある。このようなトレードオフを考慮したサービス設計が重要である。

電力中央研究所 エネルギーシステム分析領域 エネルギーイノベーション創発センター 
デジタルトランスフォーメーションユニット 上席研究員
三浦 輝久/みうら てるひさ
2001年度入所。データマイニングなどデータ分析手法の開発。博士(情報学)。

電気新聞2019年10月23日掲載

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