「陸奥鉄」が歩む第三の人生(2)
最大パーツは500キログラム超! 陸奥鉄の移設作業に密着
最大パーツの重量は500キログラム以上に及び、作業は細心の注意を払って行われた
大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館、広島県呉市)で展示が始まった、陸奥鉄を使った放射線測定装置。 最大パーツの重量は500キログラムに及び、移設には安全に細心の注意を要した。 大和ミュージアムがかねて重量物や大型展示物の運搬を依頼するパートナー、大和ミュージアムと電中研の関係メンバーによる移設作業に密着した。
電中研に陸奥鉄を使った放射線測定装置は2つあった。 このうち、既に移設を終えて大和ミュージアムで展示されているのは重量約3.4トンの陸奥鉄(小)だ。 もう一方の重量約8.3トンの陸奥鉄(大)も、2026年度中に移設作業が行われる予定となっている。
図面がない… 手探りの部分解体
解体・搬出作業を2026年1月に控え、狛江運営センターの西出裕上席が陸奥鉄(小)の部分解体を試みたのは2025年の暮れのこと。搬出時にどれくらい分解できるか確かめようとしたが古い設備で解体図面が残っていなかったため、天面を外して構造を見てみることにした。
天面と側面の陸奥鉄どうしの固定に使われていた六角穴付ボルトは9本。長さ約13センチの重厚感があるボルトで「穴に合う六角レンチを探したところ、運よく狛江地区にあった一番大きいものが使えた」(西出上席)。天面を外すと、さらに4つの側面と底面に分解できそうなことが分かった。
蓋と側面を固定していたボルト。スマートフォン(iPhone SE)と並べると大きさ・重厚感を感じる
いざ解体・搬出! 超重量級の鉄塊を扱うプロの技
年が明けて2026年1月30日。解体・搬出のメンバーが現場を見るのは当日が初めてのため、その場で作業方針が練られた。検討の結果、分解した陸奥鉄をパレットに載せて梱包し、手動油圧パレットトラックで部屋から運び出す流れに決まった。はじめに、陸奥鉄を収容していた部屋には出入り口に段差があったため、スムーズに運び出せるようスロープを設ける。
陸奥鉄が出入口の段差を越えられるよう、手作業でスロープを作った
最初に解体したのが扉部分だ。解体中ヒンジに大きな負荷がかからないようクレーンで扉をつりながら、扉とヒンジを固定するボルトを取り外す。
扉とヒンジを固定していた20本のボルトを外していく
外した扉はそのままクレーンを使ってパレットに運ぶ。クレーンが急発進・急停止すると慣性で荷物が大きく揺れてしまうため、揺れの周期に合わせてクレーンを巧みに操作しながら、陸奥鉄をパレットの位置まで移動させる。
陸奥鉄が大きく揺れないようにクレーンを操作する
次に陸奥鉄をパレットの上に寝かせる。500キログラム超の鉄塊を狙った位置に90度倒して収める必要があるため、緊張が走る瞬間だ。パレットと接する樹脂部分が自重で割れないよう保護した後、3人がかりで陸奥鉄とパレットの位置を微調整しながら、ゆっくりとパーツを横たえていく。
息の合ったチームプレーでパレットに陸奥鉄を寝かせる
無事パレットに収まったパーツは梱包して屋外に運び出し、フォークリフトでトラックに積み込む。その後他パーツについても分解、梱包、運び出し、トラック積載を繰り返し、1日がかりで陸奥鉄(小)の解体・搬出が完了した。
梱包した陸奥鉄はフォークリフトでトラックに積み込む
「一部解体ショー」が見られるかも…?
大和ミュージアムに搬入した陸奥鉄(小)は一時同館のヤードに保管し、後日、展示場所の3階科学技術展示室で組み立てた。解体時にパーツの区別や向きを養生テープに記しておいた工夫も生き、組み立ては1日で完了した。
科学技術展示室は大型展示物の分解・組み立てに対応するために2トンクレーンを2台備えており、そのうち陸奥鉄(小)の組み立てにも使った1台は、ちょうど陸奥鉄(小)の位置にある。
陸奥鉄(小)の近くに展示物の分解・組み立て用クレーンがある
「天面のパーツは比較的簡単に外せるので、クレーンを使ってパーツを持ち上げる迫力ある光景や、普段は塗装で見えない陸奥鉄の綺麗な断面や接合部をご覧いただくこともできるかもしれません」(学芸員の久保健至さん)。陸奥鉄のさらなる魅力に触れられる「一部解体ショー」が催される際は、ぜひ足をお運びいただきたい。
(No.498/2026年5月14日)