電力中央研究所

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電気新聞ゼミナール

電気新聞ゼミナール(209)
再生可能エネ主体系統の安定性確保に向けた課題とは?(その2)

電力系統に変換器(インバータ)を介して連系する太陽光発電等の再生可能エネの増大に伴い、系統に並列される同期発電機(以下、発電機)が減少すると、系統の慣性が減少することとなる。また、出力の調整が困難な再生可能エネが増大すると、周波数調整力の確保が困難となることが懸念される。今回は、このような系統の慣性や周波数調整力の減少による周波数面の課題について、電源脱落時を例に解説する。

系統慣性・周波数調整力の減少時の課題

系統の慣性は系統内で同期して回転している発電機の慣性の合計に概ね相当し、系統の慣性が大きいほど、発電と需要のバランスが崩れた際、周波数が変化しにくい(周波数の変化速度が緩やかとなる)。このため、系統の慣性が減少すると、電源脱落が発生した直後の周波数の低下速度は増大することとなる。急激な周波数変動が生じた場合、一部の太陽光発電の単独運転検出機能※1 が周波数変化を敏感に検出して系統から脱落する(発電不足を助長する)懸念があり、周波数の低下速度の増大はこのリスクを増大させる方向となる。また、系統の慣性が減少して周波数の低下速度が増大すると、周波数変動の最下点あるいは周波数低下リレー(UFR)※2 の動作周波数等に達するまでの時間が短くなる。これにより、当該時点で発動できる周波数調整力が減少し、周波数変動やUFRの動作頻度・動作量が増大するおそれがある(図)。このように系統の慣性は、電源脱落直後の周波数の低下速度を緩和し、太陽光発電の脱落を抑制する効果、および、周波数の最下点あるいはUFR動作周波数等に達するまでの時間を延ばし、周波数調整力が十分発動できる時間を稼ぐ効果がある。

また、周波数調整力が減少すれば、当然ながら周波数変動の最下点、落ち着き先は悪化することとなる。

※1 単独運転検出機能:公衆保安等のため、単独運転状態を検出して分散電源を系統から切り離す機能。
※2 周波数低下リレー:周波数の安定化や発電機の保護のため、周波数低下を検出して負荷や発電機を系統から切り離す装置。
図

図「系統慣性の減少が周波数変動に及ぼす影響」

インバータ機器への期待と課題

系統に並列される発電機の減少に伴って系統の慣性が減少した際に、周波数変動を系統慣性減少前のレベルに維持するには、現状よりも周波数調整力を増大するあるいは高速化することが必要になってくる。これを効果的に実現する技術として、蓄電池あるいは再生可能エネの余力(常時は出力に余力を持たせておく)による高速な周波数調整力の活用が今後重要となるものと期待される。

一方、系統の慣性に関しても、インバータにより発電機の慣性を模擬する制御が検討されているものの、制御方式にもよるが速応牲、安定性等に現状では課題があり、電源脱落直後の周波数の低下速度の抑制効果(太陽光発電脱落の抑制効果)は限定的となる懸念がある。このように、再生可能エネ主体系統における周波数の安定化に関しては、系統の慣性の減少への対応が特に重要となると考えられる。

著者

天野 博之/あまの ひろゆき
略歴 電力中央研究所 システム技術研究所 電力システム領域 上席研究員。
1998年度入所。専門は電力システムの解析・制御。博士(工学)。

電気新聞 2020年6月10日掲載

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