電力中央研究所

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電気新聞ゼミナール

電気新聞ゼミナール(211)
低炭素社会実現に向けて住宅用PV電力をどのように活用していくべきか?

自家消費型電源としての住宅用PV

2019年11月よりFIT買取期間が終了した住宅用太陽光発電(PV)が大量に発生している。多くの小売電気事業者が、卒FITのPV余剰買取料金や関連するサービスを提供している。政府は、FIT制度の抜本的見直しの中で、住宅用PVを自家消費型の地域活用電源と位置付けており、今後、住宅用PVがFIT新規認定を受けるためには、自家消費計画を有し、災害時に活用されることが必要となる見込みである。

PV大量連系による電源構成の変化

一方、FIT制度導入以降、電力系統へのPV連系量が増えるに従い、電源構成が大きく変化している。PV電力比率が高い電力供給エリアでは、再エネ出力制御が頻発し、昼間帯の卸電力価格が低下している。加えて、昨今では、コロナ禍により、電力需要が低下し、卸電力価格が最低入札価格0.01円で約定する状況も見受けられる。電気料金の面では、深夜料金が上昇し、昼夜間料金差が縮小している。これらの電源構成や電気料金の変化を踏まえて、PV余剰電力の自家消費の有用性を検討する必要がある。

卒FIT住宅用PV余剰電力吸収におけるエコキュート活用の効用

当所では、低炭素社会実現に向けて、住宅用PVをどのように活用していくべきかを検討しており、その一環として、卒FITの住宅用PV電力の活用方法に関する分析を行った。環境省統計の全国平均値に近い電力・給湯負荷を持つ戸建住宅(4人世帯、関西地域)を選定し、当該住宅の電力・給湯負荷の実データを用いた数値シミュレーションによって、住宅用PV電力の活用方法の有用性を評価した。PV余剰電力を吸収する設備として蓄電池、またはヒートポンプ給湯機(エコキュート)を想定した。評価期間は1年間である。エコキュート性能評価に関する当所の知見を活かして、熱源機のエネルギー消費効率(COP)や貯湯槽の放熱ロスの外気温依存性を考慮し、より実際に即した年間シミュレーション評価を行った点が特長である。有用性の評価指標として、環境面では年間CO2排出量と一次エネルギー消費量を、系統への逆潮流量低減の面ではPV自家消費率を、消費者面では需要家側の年間コスト(設備費を含む)を設定した。試算結果から、想定した条件下では、@蓄電池はPV自家消費率の向上に寄与するが、需要家にとって経済的でなく、充放電ロスがあるため省エネ・省CO2につながらないこと、一方、Aガス給湯器をエコキュートに交換すると共に、昼間運転してPV電力を自家消費することで、夜間よりも昼間のCOPが高いため、「省エネ・省CO2」「PV自家消費率の向上」「需要家コストの抑制」のそれぞれでメリットがあることを明らかにした。

図

図 卒FITのPV電力の活用方法に関する一次エネルギー消費量への影響評価

住宅用PVのレジリエンス性の評価が今後の課題

一方、災害など大規模停電時を考えると、蓄電池は非常用電源として、エコキュートはタンク内の湯や水を非常用として利用可能であり、自家消費設備によって災害時に提供できる用途が異なる。住宅用PV電力の活用方法については、低炭素社会の実現だけでなく、災害時のレジリエンス面からの評価も求められており、今後、検討を深めていきたい。

著者

高橋 雅仁/たかはし まさひと
略歴 電力中央研究所 エネルギーイノベーション創発センター カスタマーサービスユニット(兼)社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域  上席研究員。
1995年入所。専門はエネルギーシステム分析、エネルギー需要分析。博士(工学)。

電気新聞 2020年7月8日掲載

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