電力中央研究所

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電気新聞ゼミナール

電気新聞ゼミナール(219)
再生可能エネルギー導入時の火力発電の運用と効率の関係は?

エネルギー基本計画に基づく再生可能エネルギーの主力電源化に向け、太陽光発電や風力発電の大量導入が進められている。これらの再生可能エネは出力が天候に左右される自然変動電源であり、電力を安定して供給するには、その変動を補完し、電力の需要と発電量を常に調整する必要がある。この役割は、現在のところ揚水発電や出力の調整が容易な火力発電が担っている。ここでは再生可能エネの自然変動に対する火力発電の運用や、そのときの発電効率の関係について述べる。

再生可能エネの導入と火力発電の運用

再生可能エネの出力が増加し、電力需要と再生可能エネの出力との差が小さくなる場合、火力発電は発電電力を減らす。このとき、火力発電は燃料費の高い順に発電を停止する。しかしすべての火力発電が停止してしまうと、再生可能エネの出力が減少した時に火力発電の出力上昇が間に合わなくなるため、電力需給の調整に必要な火力発電は、いつでも出力上昇が可能な状態で発電を継続する。このような運用を調整運用という。

また一部の火力発電は、落雷等のような系統事故により一つの発電所からの電力供給が停止したときに備える必要があり、離脱した発電出力を補う余力をもって運転する予備力運用を実施している。

調整運用や予備力運用を行う場合、火力発電は出力の増減幅を確保するため、発電出力を下げた部分負荷で運転する。これらの運用を行う火力発電の発電効率について、部分負荷運転でも発電効率の低下の少ない汽力発電を例に考える。

部分負荷時の発電効率

図に石炭火力発電の出力と効率の関係を示す。汽力発電は、発電出力が高い時には蒸気タービンに入る蒸気の圧力が高く、低出力時には蒸気温度を変えないで蒸気の圧力を下げる変圧運転を採用している。汽力発電では発電効率を高めるため、蒸気タービンから抽気した蒸気の潜熱を利用し、ボイラへの給水を加熱する。部分負荷運転により低出力で運転する場合、蒸気タービンから抽気する蒸気の圧力が低下するため、飽和蒸気温度(抽気した蒸気の潜熱を給水に伝える温度)が低下してボイラへの給水温度を十分に高めることが難しくなる。さらに蒸気タービン入口と出口の圧力差が小さくなり、蒸気タービンで回収できるエネルギーの割合も減るため、発電効率が低下する。

図

図 石炭火力(汽力発電)の出力と発電効率

変圧運転を超えた低出力では、熱負荷の偏りからボイラを保護するため、蒸気温度も変えて圧力を保持する定圧運転とする場合もある。発電出力が低下して最低負荷となった場合、発電効率は定格時に比較して少なくとも2割程度低下する。この値は熱力学的に理想的な条件で計算したもので、熱交換器の設計点からのずれや、ボイラ燃焼条件の調整等による発電効率の低下分、および急激な出力変化に対応するための効率低下分は考慮していないので、実機の効率はさらに低くなる。

今後、自然変動性の再生可能エネの導入を拡大しながら、電力安定供給に必要な調整力や予備力を確保していく必要がある。そのためには火力発電の低出力における発電効率の向上が必要であり、また負荷変化速度といった運用性の向上も必要で、更なる技術開発が期待される。

著者

𠮷葉 史彦/よしば ふみひこ
略歴 電力中央研究所 エネルギー技術研究所 次世代火力発電領域 上席研究員。
1993年度入所。専門はシステム工学。博士(工学)。

電気新聞 2020年10月28日掲載

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