
昨年2月に示された第7次エネルギー基本計画では、2040年の再生可能エネの発電比率を4~5割程度とし、再生可能エネの主力電源化を進めていくとしている。現状、火力発電等の同期発電機の貢献により系統安定がなされているが、再生可能エネの主力電源化時にも電力の系統安定が求められる。
我が国と同じ島国の英国では、先行して発電部門の脱炭素化を進めており、すでに2025年における再生可能エネの発電比率(電力輸入を含む)が45%に達している。再生可能エネを大量導入できた英国の発電状況について、我が国との違いを含め整理した。
英国は、比較的利用率が高い風力発電を主とするが、我が国では日中にのみ発電する太陽光発電を主に増やしており、変動性再生可能エネの質が異なる。また、英国では総容量10.3GWに及ぶ他国との連系線が構築されており、最大需要の2割程度の電力融通が可能である。我が国では他国との連系線がない分、再生可能エネの増加に対しての需給調整が難しいと言える。
英国の連系線は直流送電であるため、国内で交流に変換し、50Hzで送電している。そのため、電力を他国に頼ることができるが、周波数の維持・管理は英国内で完結する必要がある。我が国では周波数を±0.2Hz(北海道・沖縄は±0.3Hz)に収まるように管理しているが、英国では±0.5Hzとしており、周波数の変動に対する許容幅が大きい。英国では再生可能エネの増加及び連系線による電力輸入量の増加に伴い、系統に接続する火力発電が減少し、系統慣性の低下が見られる(図)。
系統慣性は周波数の変化を抑制する働きをしており、英国では系統慣性120GVA・sを管理値として、それ以上の系統慣性を確保するよう運用している。近年、電源を経済性のみで確保するメリットオーダによる運用では、必要な系統慣性を確保できない状況が生じている。火力発電の追加運用での慣性確保やStability Marketといった新たな市場による慣性確保を進めており、慣性維持に追加費用が発生している。
また、電力の安定供給のため、電圧管理も重要となる。昨年4月に生じたイベリア半島大規模停電は、電圧上昇が主要因とされている。英国では送電網に接続された同期発電機が電圧調整を担っており、電圧調整に必要となる無効電力を義務的に供給している。系統から要求された無効電力を供給した同期発電機に対して、無効電力提供量に応じた対価を支払う運用がなされている。一方、近年では電圧調整コストが増加しており、それに対応するため無効電力を調達する市場(Reactive Power Market)の導入を進めている。
我が国では、慣性や無効電力供給といった系統安定に資する能力はkWh取引に内包された形で提供されているが、再生可能エネの主力電源化時には英国のように系統安定化能力を確保する必要性が高まると思われる。
上述の通り、我が国と英国ではエネルギー事情が異なるため、我が国に適した系統安定化に資する電源の運用方法や電力市場などの検討が必要である。日本機械学会に設置された「再生可能エネルギー主力電源化を支える火力発電に関する分科会」に電力中央研究所も参画し、カーボンニュートラルに向けたトランジション期の安定供給に対する、火力発電の役割を検討している。我が国のエネルギー事情を踏まえ、再生可能エネ主力電源化を支える火力発電の役割への社会的な理解が進むことを期待したい。
電気新聞 2026年6月10日掲載