
わが国は、送配電網に接続されている全ての電源を原則として対象とする発電側課金を2024年度に開始した。発電側課金は、再エネ拡大に対応した効率的な系統増強を図るため、系統利用者である発電事業者に系統増強・維持費用の一部負担を求める制度として、系統接続時に電源が支払う工事負担金とは別に導入された。送配電網の設備形成は、最大発電出力などのkW利用による評価に加え、kWhの利用状況も考慮した費用便益評価に基づいて実施されるため、発電側課金は、容量料金と従量料金で設定された。
市況に連動して発生しない発電側課金は、将来にわたる制度的費用であり、容量市場やスポット市場等で形成される電源収入との間で不整合が生じないことが求められる。そこで、送電・配電系統利用料金への発電側課金の導入と、他の制度との整合性に関するドイツの議論を紹介する。
ドイツでは、再エネが多く連系されている北部の送電系統利用料金が高くなり、需要側に意図しない価格シグナルとして作用していた。このことも背景の一つとして、発電側課金がないドイツの送電系統利用料金は、2023年より、同じ電圧階級であれば、送電事業者間で料金格差がない同一単価となっている。配電事業者や大規模需要家が、容量課金と従量課金からなる送電系統利用料金を支払う。配電事業者は、この支払いと配電系統の設備投資や運用費を考慮して、配電系統利用料金単価を設定する。
ドイツのネットワーク規制当局は、2025年5月公開の討議文書で、送電・配電系統利用料金における発電側課金導入を示唆した。規制当局の見解は、再エネの拡大に伴い送電・配電投資や混雑管理費が増加する状況で、従来の発電側課金を適用しない料金体系では、発電側による設備増強費用の抑制といった系統費用削減のための発電側への価格シグナルが働かないとの考えに基づく。
これまでにも検討されてきたものの、電源負荷率に応じて、発電側課金の容量課金と従量課金の卸電力市場への上乗せ価格が異なるため、卸電力市場への歪み、発電側課金の負担による電源投資のリスク増加などを理由に発電側課金導入は見送られてきた。今回は、討議文書公表後にワークショップを開催し、関係者団体との議論で課題を共有した上で、2026年2月に、発電側課金の新たな方向性を示した文書を公開した。発電側課金において、送電事業の設備、送電損失、送電系統運用の費用の一部を考慮する案や、そこに配電損失の費用の一部を加える案が示されている。規制当局は、大規模電源のみではなく、配電系統に接続する電源も含め、2029年以降の導入を視野に容量課金を中心とする発電側課金を検討している。
ドイツ水道・エネルギー事業者団体のBDEWは、最終的に需要家に転嫁されるとしても、その過程で市場への歪みが生じ得ること、発電側課金に対応するために各事業者のシステム変更費用が発生し得ることを懸念している。また、発電側課金は、将来の費用として発電事業者に発生する一方、容量市場やスポット市場を通じて適切に回収できるとは限らないため、電源投資のリスクとなり得るとも述べている。
一方、送電事業者は、再エネの拡大状況と費用負担の原則から発電側課金には一定の合理性がある点や、容量課金の方が安定的な費用回収が可能である点で、賛同している。また、発電側課金のみで立地誘導や価格シグナルを十分に与えることは難しいとも述べている。
発電側課金の単価について、容量市場では4年先を対象とするオークションが行われるため、4年後までの入札価格にはすでにその単価が織り込まれていると見られる。発電側課金の趣旨を維持しつつ、容量市場、スポット市場、工事負担金との整合性を確認しながら、単価の影響を検討することが重要である。
電気新聞 2026年7月22日掲載