
前回述べたように、現在の日本における系統電力と都市ガスの二次エネルギー価格比は、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)を含めると3程度、除いた価格で見ると2.5程度である。
一方、系統電力と都市ガスの一次エネルギー換算係数比は2.4、CO₂排出係数比は2.5程度である。
省エネ性や環境性とのバランスの観点から、現在の日本の二次エネルギー価格比は2.5程度が妥当であるが、再エネ賦課金が政策費用として電力に上乗せされている分だけ過大になっている。
日本が再エネ政策の参考にしたドイツでも、かつては電力消費者に再エネ賦課金(EEG賦課金)を課していた。これによって二次エネルギー価格比が増大し、電化が阻害され、熱利用はロシア産ガスに依存し続けた。
しかし、ウクライナ危機を受け、2022年7月にEEG賦課金を廃止し、再エネ支援を電力価格ではなく政府予算から行うことに変更した。これによって二次エネルギー価格比が低下した。
一方、オランダでは持続可能エネルギー賦課金(ODE)を電力だけでなく、ガスの消費者にも課してきた。そのため、再エネ支援によって二次エネルギー価格比が過大になることはなく、再エネ普及と電化促進を両立してきた。
なお、ODEは2023年にエネルギー税の一部として組み込まれた。統合されたエネルギー税は気候目標の達成に向けて毎年税率が見直されている。電化を促進するために電力の税率を低く抑える一方、ガスの税率を年々引き上げる政策を続けている。
英国では、ジョンソン保守党政権下の2021年10月に発表されたネットゼロ戦略の中で、「これからの10年間でエネルギー関連の賦課金(政策費用)を電気料金からガス料金へ再配分すること」を方針に掲げた。
その後、首相交代や政権交代を経て、スターマー労働党政権下の2026年4月から、電気料金に含まれていた一部の政策費用を暫定的に政府側で負担することになった。
さらに、10月からはバーナム新首相の方針により、生活費高騰対策の一環で、家庭用電気料金にかかっていた5%の付加価値税(VAT)が暫定的にゼロに引き下げられる。一方、ガス料金に対しては5%のVATが据え置かれる。
2026年7月、欧州連合(EU)の欧州委員会は「電化行動計画」を発表し、最終エネルギー消費に占める電力の比率(電化率)を2040年までに46%へ引き上げる指標的な目標を提案した。
具体的に列挙された行動計画の中で、電力と燃料の価格比低減が最初に言及されていることが特徴的である。産業向けの系統電力と都市ガスの価格比を2以下、家庭向けを2.5以下に抑えることを目標としている。そのための方策として、電力への課税をガスより低くすることなどが挙げられている。
上述の通り、欧州では明確に二次エネルギー価格比を低減させる方向で政策を進めている。
一方、日本では再エネ賦課金等によって、二次エネルギー価格比が高止まりしている。再エネ賦課金が2032年頃にピークアウトするとの試算もあるが、それまでは電化が阻害された状態が続くことになる。
その後は、これまでの再エネ政策の費用負担ではなく、グリーントランスフォーメーション(GX)政策の費用負担のあり方が重要な論点となる。GX経済移行債の償還財源を確保するため、2028年度から化石燃料賦課金が、2033年度からは発電事業者に対する有償オークションが導入される計画である。
二次エネルギー価格比が高止まりしたままでは、電化を通じた脱炭素化が困難になる可能性がある。そのため、欧州が二次エネルギー価格比を重要な指標として位置付けているように、日本でもそれを考慮して政策費用の負担のあり方を再考することが望ましいと考える。
電気新聞 2026年10月7日掲載
※発行元の一般社団法人 日本電気協会新聞部(電気新聞)の許可を得て、寄稿内容についてご紹介します。