ヒューマンエラー事象の分析評価手法(J-HPES)の開発



背景


原子力発電所の計画外停止の頻度は諸外国に比べれば、1/5~1/10程度に保たれているが、より一層の安全性向上のためには、ヒューマンエラーに起因するトラブルの減少に努めなければならない。そのための基本的アプローチとして、トラブルに関与した人の行為に焦点を当て、その原因および対策を提案できるシステムが必要となった。


目的


トラブルに関与したヒューマンエラーについて、関係者の個人の責任や問題点を追求することなく、「トラブルの事実関係の調査」「背後に潜む原因の分析」「フェールセーフなどの有効な対策の提案」を行える分析評価手法を開発する。


主な成果


運転や保守作業において発生したヒューマンエラーを様々な角度から分析し、再発を防止するための対策を提案する手法として、J-HPES*を完成した。

  • ① 表面に現れてくる直接的な原因ばかりでなく、背後にある潜在原因や根本原因まで漏れなく分析し、階層的な対策案を提案できる系統的な手法として完成した(図1)。

  • ② 開発した分析・評価手法は、比較的容易に習得できるように、図2に示す手順書の形にとりまとめた。また、手順は理解しやすいように4段階、15ステップの簡潔な構成とした。

  • ③ 本手法の普及を進めるために、定期的に電力各社の担当者を対象とした講習会を実施し、受講者は延べ約300名に達している。また、できるだけ多くの人の理解と協力を得ることが必要と考え、イラスト版の解説資料(図3)、およびビデオを作成し、広く配布した。

  • ④ 本手法は、当初、原子力発電所を対象として開発したものであるが、一般産業にも適用可能であることから、学会活動などにより、広く産業界に流布され、電力の火力、送電、工務部門のみならず、化学プラント、鉄鋼、鉄道、航空など一般産業界の合計約90社からの要請に対応して手順書を配布した。

*J-HPES:ヒューマンファクター分析・評価手法(Japanese Version of Human Performance Enhancement System)




(図1)


(図2)


(図3)