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社会経済研究所 コラム

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企業の気候変動情報開示
−TCFDへの関心拡大 エネ産業にも影響波及−

電力中央研究所 社会経済研究所
 上席研究員 上野 貴弘

 近年、ESG投資の拡大やパリ協定発効による温暖化対策の強化などを背景に、投資家や金融当局等の間で、企業の気候変動に関する情報開示への関心が、急速に高まってきている。

 そのような中、最近存在感を増しているのが、気候関連財務情報開示タスクフォース(通称TCFD)である。TCFDは2015年12月に、主要国の中央銀行や金融当局等で構成される金融安定化理事会によって設置された組織であり、企業が気候変動情報を自発的に開示する際に使用するガイドラインの作成をミッションとする。メンバーは民間人であり、元ニューヨーク市長のブルームバーグ氏が議長を務める。

 TCFDは1年以上の作業を経て、2017年6月に最終報告を公表した。その中で、開示を奨励する情報として、@ガバナンス、A戦略、Bリスク管理、C指標と目標を設定したうえで、それぞれについて開示すべき具体的項目を定めた。開示項目には部門横断的なものと部門別のものがある。

 現在、TCFDは賛同企業・団体を募っており、今年8月時点で、390以上の企業・団体が賛同者としてTCFDのウェブサイトに掲載されている。日本では、大手銀行や保険会社などの金融機関、メーカー等に加えて、金融庁と環境省が名を連ねている。

 TCFDが求める開示項目の中で最も特徴的なのが、戦略に関する項目の1つである「シナリオ分析」である。これはパリ協定に盛り込まれた2℃目標や各国がパリ協定の下で掲げた目標に沿った将来シナリオを想定し、その下での企業のリスクや機会を分析するものである。

 従来、2℃シナリオ分析は、研究機関等がモデルを用い、世界全体や国別のエネルギー需給などの姿を定量的に示すものであったが、TCFDの提言は、同様の分析を企業別に行い、開示することを求めた。

 しかし、2℃シナリオ分析を企業別というより細かい単位で実施することには、方法論上の高いハードルが存在する。TCFDはシナリオ分析に関する補足文書も公表したが、これを見ても分析をどのように企業単位に落とし込めるのかがはっきりしない。

 それゆえ、現時点ではTCFDへの賛同企業に比して、2℃シナリオ分析の開示企業は非常に少ない状況にある。

 そのような中、海外のエネルギー企業の一部が、株主総会での提案など、投資家からの圧力もあり、2℃シナリオ分析の開示に踏み切った。代表例がエクソンモービル、シェブロン、BP、シェルといった石油メジャーである。企業間で分析方法に多少の違いがあるが、2℃シナリオにおける原油の需要減少スピードよりも、生産設備への追加投資を行わない場合の生産減少スピードの方が速いことから、原油生産への追加投資が正当化されるという論理構成をとっている。

 米国の電力2社(デュークエナジーとPPL)も2℃シナリオ分析を今年公表し、老朽化した石炭火力を、米国では安価な天然ガス火力や、再エネなどで代替し、CO2を大規模削減するという絵を描いた。

 こうした開示に投資家がどう反応するのかはまだ見えないが、関心の高まりに呼応する企業は徐々に増えていくものと思われる。

電気新聞2018年9月11日掲載

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