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社会経済研究所 コラム

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米中間選挙と気候変動
−政府予算に民主の意向 州の炭素税提案は否決−

電力中央研究所 社会経済研究所
 上席研究員 上野 貴弘

 11月6日に米国連邦議会の中間選挙が行われ、上院では共和党が過半数を維持したが、下院では民主党が8年ぶりに多数派を奪取した。同時に、36州で知事選が行われ、7州で共和党から民主党に知事が代わることになり、改選がなかった州も合わせると、共和党が27州、民主党が23州となった。州議会選挙においても、いくつかの州で民主党が多数派を取り戻した。
 これらの結果が米国の気候変動対策にどのような影響を及ぼすかを考察する。

①共和党の上院多数維持

 連邦最高裁判事や閣僚を共和党の賛成だけで任命できる状況が続く。最高裁判事はカバノー氏の任命で保守系が多数(9名中5名)となったが、残りのリベラル系4名のうち、今後2年で誰かが退任した場合、再び保守系の人物が任命されることになる。
 保守派が多数を占める現在の最高裁では、オバマ前政権が進めたような気候変動関連の規制等は否定される可能性が高く、保守派判事の更なる任命があればこの傾向が一層強まる。しかも、最高裁判事の任期は終身であるため、影響は長期にわたる。

②民主党の下院多数奪取

 下院では単純過半数で法案を可決できるため、民主党議員が結束すれば、炭素税やキャップ&トレードの導入法案を可決できる。しかし、上院で可決される見込みは無く、トランプ大統領の拒否権もあることから、仮に下院が可決しても実際上の意味はない。
 他方、政府予算については、歳出法を両院と大統領の合意の下で毎年成立させなければならないことから、今後は超党派の合意形成が一層重要になる。民主党の意向が反映されやすくなるため、クリーンエネルギー関係の技術開発予算の増額や、パリ協定下の緑の気候基金への拠出復活の可能性がある。

③知事選の民主党躍進

 トランプ大統領は昨年6月1日に、パリ協定からの脱退意向を表明したが、同日に、民主党知事の州を中心として、パリ協定支持の州連合が立ち上がった。この連合に、新たに民主党知事が就任する7州が参加する可能性がある。現時点の連合参加州の排出量は米国全体の25%程度だが、7州の排出量は12%程度であり、仮に全てが加われば、全米の約4割の排出量をカバーすることになる。

④州の住民投票

 いくつかの州ではエネルギー気候変動対策に関する住民投票も行われた。
 全米の中でもグリーン色が強いと言われるワシントン州では、炭素税導入提案の住民投票が行われた。事前の報道では可決の可能性が高いと伝えられたが、反対56%で否決された。
 その他、アリゾナ州では再エネ比率拡大提案が否決されたが、ネバダ州では同様の提案が可決された。

⑤パリ協定脱退への影響

 協定の規定上、脱退を正式に通告できるのは来年11月4日以降である。正式通告するかどうかは大統領権限で決めることであり、今回の選挙結果に伴う直接的な影響はない。ただし、2年後の大統領選挙を見据えて、外交面で強硬姿勢を打ち出す可能性があり、その一環として正式脱退するかもしれない。
 なお、正式脱退しても2020年の選挙で政権交代する場合には、大統領権限ですぐに復帰するものと思われる。

電気新聞2018年11月20日掲載

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