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米民主党と気候変動
−若年層の運動が活発化 大統領選挙への影響も−

電力中央研究所 社会経済研究所 
上席研究員 上野 貴弘

 昨年11月6日に米国連邦議会の中間選挙が行われ、下院では民主党が8年ぶりに多数派を奪取した。主導権を握った民主党は気候危機に関する特別委員会の設置を決め、気候変動問題を取り上げる姿勢を鮮明にしたが、特別委設置の背景には「サンライズ・ムーブメント」という若者を中心とする団体の存在があった。

 サンライズ・ムーブメントは2017年に立ち上げられたグラスルーツの環境団体であり、強力な気候変動対策を通じた雇用創出を「グリーン・ニューディール」として訴求している。2018年の選挙では、主に民主党の予備選において「化石燃料産業の資金を受け取らない」と誓約した候補を支持するなど、政治にも関与した。

 サンライズ・ムーブメントの支持を得た候補者の1人が、今回の選挙で下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏である。オカシオコルテス氏は、下院議員を10期20年務めたクローリー氏を予備選で破り、本選挙でも勝利した。オカシオコルテス氏も29歳と若い。

 中間選挙直後から、オカシオコルテス氏とサンライズ・ムーブメントは、下院に特別委員会を設置して、グリーン・ニューディール法案の起草権限を与えることを求めた。その際、サンライズ・ムーブメントに加わる若者が下院民主党を率いるペロシ議員の執務室を占拠し、51名が逮捕される騒ぎになったが、この件を契機として、メディアで取り上げられるようになり、「グリーン・ニューディール」という要求と合わせて注目の的になった。

 ペロシ氏はサンライズ・ムーブメントの要求を踏まえ、法案の審議権限を有さない特別委員会の設置を提案した。他方、民主党議員の中には、特別委員会の設置自体に懐疑的な意見も根強かった。党内での調整が行われた結果、法案の審議権限と証人の召喚権限を有さない「気候危機特別委員会」を設置しつつ、エネルギー商業委員会などの既存の委員会でも、気候変動対策を扱うことになった。

 オカシオコルテス氏とサンライズ・ムーブメントの要求はグリーン・ニューディール法案を起草する特別委員会の設置であり、今回の決着はその要求通りではなかった。しかし、気候変動対策を求める若年層の運動の影響力を示す結果となり、来年の大統領選挙に向けて、その勢いはさらに増しそうである。

 現時点で民主党側の本命候補は見えていないが、有力な候補と目されているハリス上院議員やウォーレン上院議員は、グリーン・ニューディールという考え方を支持すると表明した。ただし、具体的な内容には踏み込んでいない。他方、サンライズ・ムーブメントを含む600超の団体はグリーン・ニューディール実現のため、2035年までに全電力を再エネとし、2040年までに化石燃料車を全廃する立法を求めるなど、グリーン・ニューディールの内容を明確にしつつある。大統領選の民主党候補の公約に何らかの影響を及ぼすだろう。

 しかも、来年の選挙からカリフォルニア州が予備選の日程を6月から3月のスーパーチューズデーに前倒ししたことで、民主党の候補者選びにリベラル色の濃い同州の影響が強まる。各候補は予備選を勝つために、急進的な気候変動対策を掲げる可能性がある。

電気新聞2019年2月5日掲載

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