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米共和党と気候変動
−民主党への対案を提示 CCU・原子力に期待−

電力中央研究所 社会経済研究所
  上席研究員 上野 貴弘

 米国では、昨年の中間選挙の結果、連邦議会下院の多数派が民主党となり、気候変動を巡る議論が議会の内外で活発になった。いわゆる「グリーン・ニューディール」論だけではなく、気候変動と国家安全保障の関係に関する公聴会が下院の監視・政府改革委員会で開催されるなど、幅広い観点から議論されている。こうした流れの中で、共和党議員も気候変動に関する動きを見せるようになった。

 まず注目すべきは、グリーン・ニューディール論への対応である。若年層の運動に促される形で、民主党のオカシオコルテス下院議員とマーキー上院議員は、気候変動対策を雇用創出や社会正義の文脈で追求すべしとする「グリーン・ニューディール決議案」を上下両院に提出した。大統領選挙の民主党有力候補であるサンダース上院議員、ハリス上院議員、ウォーレン上院議員、ブッカー上院議員らも共同提案者として名を連ねた。他方、決議案には直接的には書かれていないが、グリーン・ニューディールの推進団体は、2035年までに全電力を再エネとし、2040年までに化石燃料車を全廃とするといった非常に急進的な要求をしており、民主党の一部に同調することへの懸念が出ていた。

 この状況を捉え、上院の議事を取り仕切る共和党のマコネル院内総務は、決議案に関する投票を行って、民主党の中の意見相違を炙り出そうとした。しかし、民主党側は賛否を明らかにしない「態度保留」として対応することを決め、大統領選の候補者全員を含む大半の民主党議員が、投票の際に賛否を示さなかった。ただし、産炭州出身の議員ら3名は、共和党議員全員とともに反対票を投じた。

 他方、民主党への牽制とは別に、共和党議員の一部がグリーン・ニューディールへの対案を示すようになった。たとえば、今期限りでの引退を表明したアレクサンダー上院議員は、クリーンエネルギー分野の研究開発への連邦政府予算を倍増させるべきと提案した。

 また、トランプ大統領に近いとされるガエッツ下院議員は、直接的な対案として「グリーン・リアル・ディール決議案」を提出した。炭素回収貯留・回収利用(CCS・CCU)への投資、再エネと小型炉を含む原子力の次世代技術への投資、電力系統の刷新、自主的な気候変動情報開示等を通じて、温室効果ガスの排出削減を進めるべしとする内容である。

 2つの提案で共通しているのは新技術への投資拡大であるが、この点については以前より、超党派連合が存在し、最近、その存在感が増している。例えば、CCS・CCUと原子力発電については、昨年2月に超党派議員の連携で税控除の拡大・維持が決まった。さらに、超党派の一部議員がCCUと大気中からのCO2直接回収の研究開発を支援する法案や、先進原子炉の研究開発を推進する法案を提出した。CCS・CCUに対する政府予算の拡大も超党派で提案された。

 トランプ大統領は気候の科学に懐疑的で温暖化対策に消極的であり、クリーンエネルギー分野の研究開発予算を削減しようとしている。他方、来年の再選に向けて、環境について積極姿勢を演出する必要が出てきた際には、新技術への投資拡大という提案に同調するかもしれない。

電気新聞2019年4月16日掲載

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