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バイデン氏の気候計画
−大統領選見据えて提示 2050年に正味ゼロ排出に−

電力中央研究所 社会経済研究所
 上席研究員 上野 貴弘

 米国では、来年の大統領選挙に向けて、トランプ大統領に対抗する民主党の候補選びが本格化してきた。20人以上が予備選に向けた選挙活動を行っているが、現時点では、バイデン前副大統領が人気面で他の候補を大幅にリードしている。6月26日と27日には、最初のテレビ討論が行われた。

 気候変動は、経済やヘルスケアといった分野ほどではないものの、これまで以上に民主党支持者の関心を集めており、候補者選びにおいて重要争点の1つになると見込まれている。そのような中、バイデン氏は6月4日に気候変動に関する計画を発表した。

 バイデン氏は計画の中で2050年までにクリーンエネルギー100%を実現し、国内排出を正味ゼロにするという長期目標を掲げた。そして、就任1年目に、長期目標達成に向けた新規立法を議会に求めるとした。その柱は、①2050年目標達成のための「強制メカニズム」の創設(2025年までの目標を含む)、②研究と技術革新に対する10年間で4千億ドルの投資、③クリーンエネルギー技術の迅速な導入へのインセンティブである。

 強制メカニズムは汚染者負担の原則に基づくものであり、負担を少数の部門に寄せるのではなく、経済全体での削減を目指すものと位置付けられているが、具体的な制度案は示されていない。2025年目標に関しては、オバマ政権の目標(2005年比で26〜28%減)には触れず、議会に委ねる形となっている。

 研究と技術革新については、バッテリー、小型原子炉、再エネ水素などを例示しつつ、炭素回収利用貯留(CCUS)の開発と原子力発電の諸課題に関する研究を特記した。

 クリーンエネルギー技術の導入については、建物の省エネや電気自動車の導入に触れつつ、低排出製造業による雇用拡大を掲げた。

 バイデン氏の気候変動計画で注目されるのは、気候変動外交にもかなり踏み込んでいることである。

 就任当日にパリ協定に再加入するだけではなく、就任から100日以内に主要排出国の首脳が参加する気候サミットを開催し、現行目標を超える野心的な目標の提示を求めるとの考えを示した。ただし、次期政権が発足する2021年時点で、他国はパリ協定の下で2030年目標を掲げていることになるが、バイデン氏の計画は米国の2030年目標を示していない。

 また、気候変動対策が不十分な国からの炭素集約度の高い輸入品に対し、炭素調整の課金や割り当てを課し、国際競争上の悪影響を緩和するとした。

 さらに、中国が一帯一路構想の下で、石炭など化石燃料プロジェクトに多額の融資を行っていると批判し、石炭や他の高排出技術への輸出補助を止めない限り、中国とは炭素削減に関する合意を結ばないと宣言した。また、高炭素プロジェクトに対する輸出補助停止のG20合意を目指すことも掲げた。

 バイデン氏は中道穏健派と見られているが、民主党支持者の間では、近年、リベラル派の影響力が強まっている。バイデン氏の計画は、リベラル派が支持するグリーン・ニューディールを「不可欠な枠組」と位置付けて配慮を見せたが、CCUSと原子力を特記するなど中道的な側面も滲ませるものであった。

電気新聞2019年7月2日掲載

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