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米民主党候補の気候公約
−オバマ継承のバイデン 急進路線のサンダース−

電力中央研究所 社会経済研究所
 上席研究員 上野 貴弘

 トランプ大統領に対抗する候補者を選ぶ民主党の予備選挙が佳境を迎えた。本稿執筆時点で、候補者はバイデン氏とサンダース氏に実質絞られ、バイデン氏が非常に優勢とされている。世論調査によれば、気候変動対策は民主党支持者が最重要視する政策課題の1つであることから、両候補の気候公約を読み比べる。

 両者の気候公約は各候補のウェブサイトに掲載されているが、バイデン氏は6万字程度、サンダース氏は8万字程度と、ともに長大である。このことは、今回の予備選挙における気候変動の重要性を示している。

 ざっと見比べた時に気づくのは、公約の柱が似通っていることである。両者ともに、@クリーンエネルギーへの完全な転換とネットゼロ排出の実現に向けた巨額の政府支出、A気候影響に対するインフラ強靭化、Bパリ協定復帰と国際的取組の強化、C汚染企業への責任追及、D気候の悪影響の前線に立つ低所得層等の保護、E炭鉱労働者等への経済支援を、公約の見出しや主要項目とした。

 類似したのは「グリーンニューディール」を両者が意識したことによる。グリーンニューディールは、脱炭素化を強力に進めつつ、失業や所得格差といった不公平と、弱者が気候影響の被害者となる不公正も同時解決しようという構想である。18年の中間選挙後に若年層の団体が提唱し、リベラル層の間で一気に火が付いた。時をほぼ同じくして予備選に出馬する候補者が活動を本格化させたことから、グリーンニューディールは多くの候補者に影響を与えることになった。バイデン氏とサンダース氏の公約に前述のCからEが含まれたのはその表れである。

 しかし、個別の項目を読み比べると、両者の違いが顕著になる。たとえば、両者ともに50年までにネットゼロ排出や脱炭素化を実現するとしているが、バイデン氏は全量クリーンエネルギー化の時期も50年とし、その中に原子力発電や炭素回収貯留が含まれる可能性を残した。他方、サンダース氏は電力と運輸を30年までに全て再エネとし、原子力発電と炭素回収貯留には依存しないとした。

 50年以前の排出削減目標については、バイデン氏が25年目標の設定を議会による新規立法に委ねるとしたのに対して、サンダース氏は30年までに国内排出を71l削減するとした。

 汚染企業への責任追及について、バイデン氏は懲役刑の可能性に言及するなど踏み込んだが業種は特定しなかった。他方、サンダース氏は化石燃料産業を明示的にターゲットとした。

 ともにグリーンニューディールを意識しているが、バイデン氏の公約はこの言葉に1回しか言及せず、自身が副大統領を務めたオバマ政権の成果を随所に散りばめた。サンダース氏は公約の表題をグリーンニューディールとした上で、本文中でも22回使用し、前面に打ち出した。

 バイデン氏が今の勢いを保てば、民主党の候補者に指名されるだろうが、本選に向け、民主党を一つにまとめるには、サンダース氏派への配慮が必要となる。両者の公約は、50年目標、パリ協定復帰、高排出製品への炭素関税、化石燃料補助金の廃止といった点で共通しているが、相違も大きい。7月の党大会に向けて争点となる可能性がある。

電気新聞2020年3月17日掲載

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