電気新聞ゼミナール

2018.02.14

再生可能エネ大量導入下のドイツはどのように需給調整の費用低減を目指したか?

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電気新聞ゼミナール(149)

【日本の需給調整費用低減の動き】

 1月23日開催の電力広域的運営推進機関の「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」の席上、一般送配電事業者9社より、周波数維持に使う調整力の広域活用である「広域需給調整システム」の構築が提案された。同システムは、近年の再生可能エネ急拡大による需給調整費用増加等の懸念に対応するため、各エリアのインバランスを相殺する「インバランスネッティング」と、その後の残余のインバランス解消のために、各エリアで調達した需給調整能力を「広域メリットオーダー」で発動することを検討している。
 広域需給調整システムと類似した機能を既に実装しているドイツでは、どのように需給調整の費用低減を図っているのだろうか。

【需給調整費用低減の二つの方策】

 ドイツでも、卸電力取引等の計画量と実需とのインバランスは、4つの送電事業者(TSO)による需給調整で解消している。これに必要な調整力は、応答速度の順に、プライマリー・コントロール・リザーブ(PCR)、セカンダリー・・コントロール・リザーブ(SCR)、ミニッツ・リザーブ(MR)に分類される。需給調整能力の確保は、元々各TSOが個別に行っていたが、競争促進を目的として、全国需給調整市場が2007年に設立され、10年から各TSOがこの市場を通じて確保している。
 需給調整費用低減に向けた第一の方策は、全国市場による確保に加え、各TSO間で需給調整能力を共有するメカニズムであるグリッド協調制御(GCC)の導入である。GCCでは、08年から10年にかけ、インバランスネッティングの導入に始まり、TSO間でのSCRとMRの相互活用、ドイツ全体でSCRとMRのメリットオーダーでの活用を、段階的に実施した。また11年には周辺国との間でのインバランスネッティングも導入された。
 第二は、再生可能エネも含め、インバランスを減らすための市場運用の変更である。ザラバ形式の当日市場に、既存の1コマ1時間の商品に加え、同15分間の商品も導入した。また、09年には当日市場の取引終了時刻を、実運用の75分前から45分前に変更し、15年には30分前とした。さらに、14年には国内のみの1コマ15分間の新たな単一価格オークション市場を設置した。

【需給調整能力の確保費用は低下傾向】

 ドイツ連邦ネットワーク規制庁は、需給調整能力の確保容量は大きく変化していない一方、確保費用は低下傾向にあるとの評価結果を示している(図)。また、活用されたSCRの年間平均エネルギー量は、GCC実施前よりも低下している。これらの改善は、上述の二つの方策の相乗効果によると考えられている。ただし、これらの改善には、再生可能エネの出力予測精度の向上や、市場参加者の入札行動の洗練化も作用している。実際に使用された調整能力の内訳は公開されておらず、たとえばGCC単独でどの程度需給調整費用を低下させたかについて、定量的には必ずしも明らかではない。
 日本での需給調整費用の低減のために、送配電部門の取組みの実効を見極めつつ、インバランス低減との相乗効果を求めることも参考になる。

電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 主任研究員
古澤 健/ふるさわ けん
2007年入所。博士(工学)。専門は電力系統工学

電気新聞2018年2月14日掲載
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