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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (151)

発送電分離後の米国の電力会社に生じた変化から
何を読み取るべきか?

 今回から二回連続で発送電分離後の欧米の電力経営に生じた変化を読み解いてみたい。前編となる今回は米国を取り上げる。

【競争分野と規制分野の所有に関する類型】

 米国では、小売自由化を進めた自由化州の垂直統合型の電力会社に、系統運用部門の機能分離に加え、発電部門の所有権分離や法的分離が求められた。所有権分離された発電部門の多くは独立系発電事業者(IPP)に買収され、競争分野の経営に特化した。また、系統運用を除く送配電部門は、従来通りの規制分野の経営を継続した。
 一方で、発電部門の法的分離を実施した電力会社は、同じ資本の下で、競争分野と規制分野の両者を併せ持つ「ハイブリッド」となった。規制当局が所有権分離を強く促した州では、事実上、電力会社に選択の余地はなかったが、ハイブリッドとなるのは自らの選択であった。日本の電力会社も、法的分離の直後は、米国の分類でいえばハイブリッドとなるだろう。

【ハイブリッドから規制分野への回帰】

 投資家から見ると、競争分野のIPPは、ハイリスク・ハイリターン事業、規制分野の送配電部門はローリスク・ローリターン事業、ハイブリッドはその中間に位置づけられると考えられる。実際、株式ベータや格付けはそのような傾向を示している。
 しかし近年は、卸電力価格の低迷を受け、IPPの業績が悪化している。一方で、ローリスク・ローリターンと思われていた米国の規制分野は成長し、その収益性はハイブリッドのそれよりも一貫して高かった(図)。
 そのような中、ハイブリッドの大手事業者の間で、競争分野の発電事業をIPPに売却して手放すとともに、異なる地域の送配電事業の買収を進め、規制分野に回帰、専念する動きがみられる。

【競争分野と規制分野の二極化は不可避か】

 こうした一部のハイブリッドの動きから、米国では、競争分野の事業と規制分野の事業で、所有も分ける二極化が進んでいるようにも見える。株式市場で評価されるには、それぞれ得意分野に専念する必要があったということかもしれない。
 ただし、米国ではもともと規模の小さい民間の電力会社が多く、地域を超えた買収合併による効率化の余地が大きかったことがそれを可能にしたともいえる。IPPは小売事業者を傘下に加えてリスクヘッジを図るとともに、同じ発電部門の買収合併で効率化を図ったりしている。また、規制分野の収益性が高いのは、規制当局が、再生可能エネの大量導入等への対応に必要な送配電投資を積極的に認めてきたという背景もある。もともと送配電費用が電気料金に占める割合は小さく、ガス価格の下落により発電費用が低下する中、送配電費用の上昇による値上げはほとんど問題になっていない。米国の電力経営の二極化の背景には、こうした特有の事情もある。
 したがって日本において二極化が進むとは限らず、ハイブリッドが株式市場で評価される可能性もある。しかし、不確実な将来に備え、事業ポートフォリオの中で、自社の強みと弱みがそれぞれどこにあるかを見極め、今後の国内の事業環境にどのような機会と脅威が潜んでいるかを把握しておくことは重要である。

電力中央研究所 社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 副研究参事
服部 徹/はっとり とおる
1996年入所。博士(経営学)。専門は公益事業論。

グラフ

電気新聞2018年3月14日掲載

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