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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (157)

英国の新しい料金規制RIIOは送配電部門の投資を促したか?

 今回は欧州の送配電料金規制における投資促進策について、英国の事例を紹介する。
 英国では、2013年からRIIOという料金規制のもと、投資を促している。RIIOでは、レベニューキャップ(R)による効率化インセンティブ(I)を維持しつつ、イノベーション(I)やアウトプット(O)を重視する。アウトプットとは、送配電事業者のサービスについてkWhのみでは測れない価値を表すもので、現在は、信頼度、環境、需要家サービス、接続、安全性、社会的義務(低所得者への配慮)の6つの項目が設定されている。RIIOでは、送配電料金をアウトプットの対価として捉え直し、送配電事業者がアウトプットの創出に必要な投資を料金収入で回収することを認め、送配電部門の設備投資を促している。

【RIIO導入後の投資に見られる変化】

 投資を促すRIIOの実際の有効性の評価は時期尚早であるが、2013年からこの制度を導入した送電部門では、計画どおり洋上風力の系統接続の工事に着手し、RIIO以前よりも投資規模が約30%増加している。
 他方、配電部門の設備投資は遅れが指摘されている。これは英国の規制当局の報告によると、配電部門にRIIOを導入した2015年頃から、英国の欧州連合離脱による投資家の不安が高まったことへの対応もあるが、昨今のデジタル化の進展に伴い、技術選択に慎重になり、投資を延期している側面も大きい。実際に配電事業者の2017年時点の費用項目をみると、RIIO以前より全体の規模は増加しているが、アウトプットの創出のために増加する予定であった既設のリプレイスと新設による増強が想定した水準に達していない(図)。ただし、今後は延期された投資計画に着手する見通しが示されている。そもそも投資の状況について、遅れが認識されていること自体、RIIOによって明確な目標を設定したからとも言える。

【RIIOで求められる投資の有益性】

 RIIOにおける投資は、規模も大きいため、実際に送配電事業者がアウトプットに資する投資をしているかを評価することは極めて重要である。規制当局のこれまでの評価結果をみると、配電部門では投資が遅れていることもあり、6つのアウトプットのうち、接続の時間に関する評価が低い地域がある。しかし、それ以外の評価は送電部門も含め、RIIOで期待している内容の投資が進められていると言える。

【より安価な料金が求められる現実も】

 RIIOでは、アウトプットの実現と同時に、可能な限り需要家の負担を軽減することが求められている。しかし、これまでのところ、投資を重要視し、事業者が投資を行うために十分な収入を認めた一方で、需要家の負担が軽減されていないとの指摘がある。このため現在は、2021年4月からのRIIOの第2期に向けて、事業報酬率の引き下げや原価算定期間の短縮等も検討されており、事業者と需要家間の利益の配分のあり方が模索されている。
 このようにRIIOにも課題があるが、事業環境が従来から変化する状況において、送配電部門の価値を再評価する取り組みは、わが国にとっても示唆に富むと言えよう。

電力中央研究所 社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 主任研究員
澤部 まどか/さわべ まどか
2009年入所。博士(商学)。

電気新聞2018年6月13日掲載

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