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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (167)

BL市場の監視策について、
独禁法のプライス・スクイーズ規制からなにが言えるか?

【BL市場の創設と監視のあり方】

 新電力によるベースロード(BL)電源へのアクセスを担保するため、その電気を取引する市場(BL市場)が創設され、旧一般電気事業者には一定量の供出が義務付けられる。また、その入札価格には、電源の平均費用に基づく上限規制が課せられる。
 BL市場での入札価格をめぐっては、政府の審議会において、独禁法のプライス・スクーズ規制を根拠に、小売料金水準と比較して入札価格が不当に高額でないかを監視するべきとの指摘がなされている。

【プライス・スクイーズとは?】

 プライス・スクイーズ(以下、スクイーズ)とは、中間財(例:卸電力)と最終財(例:小売電力)の双方を供給する垂直統合企業(図の事業者A)が、最終財の市場(川下市場)での競争相手(同B)向けの卸価格を、川下市場でおよそ利潤が出ない水準まで引き上げ、競争相手を排除することを言う。
 垂直統合企業は、スクイーズにより川下市場からライバルを排除した後に市場支配力を行使し、値上げが可能になる。また、新規参入者が川下市場に参入して経営・顧客基盤を確立した後に中間財の市場(川上市場)へ参入を試みる可能性をも見越せば、スクイーズによる排除は、垂直統合企業の川上市場の市場支配力の維持にも繋がる。

【正常な価格競争との見極めが重要】

 ただし、スクイーズは常に独禁法違反とされるわけではなく、市場競争を阻害する場合、すなわち、垂直統合企業が川上市場で独占的地位にあるため、競争相手が他の調達先を見いだせないといった場合に限るべきとされている。このような慎重な態度の背景には、正常な価格競争と不当なスクイーズの区別が困難な上に、スクイーズ規制回避のため、垂直統合企業が卸価格の値下げでなく、小売価格の値上げを選択するとの懸念がある。
 この懸念をBL市場入札価格の監視にあてはめると、小売料金と比較して入札価格が不当に高いとの指摘を受ける可能性のある事業者が、小売料金を引き上げることに相当する。そのような懸念が直ちに現実化するとは考えにくいが、BL市場の監視が、その意図に反して、事業者の値下げに対する負のインセンティブとなっては、電力システム改革の目的とは相容れない。そのため、小売料金が入札価格と比較して低廉であることが、事業者間の価格競争の表れなのか、それとも競争を歪める不当なスクイーズと同視できるのかは、慎重に見極める必要がある。

【投資インセンティブにも配慮を】

 また、独禁法のスクイーズ規制をめぐっては、卸価格を過剰に抑制した場合、垂直統合企業が川上市場から撤退してしまうおそれも指摘されている。
  もちろん、BL電源は、電力の安定供給確保のために必要なものであり、それらがすぐに休廃止されることはないだろう。しかし、BL電源の維持には継続的な保守・修繕を要することも事実である。市場監視の結果、入札価格を過度に引き下げざるを得なくなると、電源の維持に必要な費用の回収が困難になりかねない。
 また、新規参入者がBL市場からの調達に過度に依存することは、電源に自ら投資するインセンティブを削ぎかねない。このような発電市場の中長期的な競争への帰結も考慮した監視の在り方が期待される。

電力中央研究所 社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 主任研究員
佐藤 佳邦/さとう よしくに
2006年入所。専門は経済法。

図:プライス・スクイーズの例

Aが中間財の卸価格を11円に引き上げた場合に、BがAと競争するため小売価格を10円以下にしようとすると、Bにとって逆ざやとなってしまう。もしも、Bが他の調達先を見出せなければ、市場から排除されてしまう。

電気新聞2018年10月31日掲載

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