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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (169)

ドイツのインバランス料金制度の変遷から何を読み取るべきか?

 わが国では、需給調整市場創設後の調整力コストを指標とするインバランス料金の設計に向けた検討が進められている。この検討では、調整力コストを過不足なく回収し、系統利用者に需給調整の円滑化に向けた適切なインセンティブとなるインバランス料金が求められている。しかし、同様のインバランス料金の設計を目指したドイツでは、試行錯誤を余儀なくされている。

【ドイツの基本インバランス料金単価】

 ドイツでは、2010年5月に、全国大のインバランス料金単価が設定された。系統運用者(TSO)は、3種類の需給調整力を確保・運用しており、そのうちの応答速度の遅い2つの需給調整力売買で生じた上げ代と下げ代の超過費用を、系統でのインバランス量で除した値を基本インバランス料金単価として設定した(図)。これにより、調整力コストは過不足なく回収できる。加えて、運用する調整力の増加とともに、調整力コストは逓増的に増加する傾向があるため(図)、系統全体のインバランスが大きい方が、インバランス料金単価は高くなる。そのため、小売事業者がインバランスを小さくし、需給調整力の運用を減らしてインバランス料金単価を小さくするインセンティブを付与できている。

【過度なスパイクの問題とその防止のための補正】

 しかし、この基本インバランス料金単価の設定方法では、系統大でのインバランスが微小のときに、単価がスパイクすることがある。すると、インバランスを発生させた小売事業者は、過大なインバランス費用を支払うという問題が生じる。そのため、@落札された需給調整力の最高電力量単価と、基本インバランス料金単価の絶対値の小さい方をインバランス料金単価とする補正が導入された。

【他の市場を考慮した需給調整円滑化のインセンティブの補正】

 もう一つの問題として、当日市場の価格次第では、小売事業者は当日市場で取引をして自社内のインバランスを解消するよりも、TSOによる需給調整でインバランスを解消させる方が、経済的に望ましくなる可能性があった。これは、前日市場の取引締切前に、需給調整市場の入札が締め切られ、需給調整力の電力量価格が公開されるためである。そこで、12年12月から、さらに2つの価格補正ルールが追加された。A系統大の需給ひっ迫(供給余剰)のときには、インバランス料金単価は、当日市場価格以上(以下)とする補正と、B系統大のインバランス量が大きく、事前にTSOが確保した需給調整力の80%以上を運用した場合、インバランスの不足(余剰)時には、インバランス料金単価はより高く(より低く)するという補正である。

【新たな補正や抜本的な見直しの必要も】

 インバランス料金の設計において、小売事業者に過度なリスクを負わせてしまう可能性や、他の市場での取引が需給調整の円滑化を妨げる可能性を考慮する必要があることを示した点で、ドイツの経験は参考になる。しかし、それぞれに対する補正が適切だったかどうかは、今後の評価を待つ必要がある。その結果、将来的には抜本的な見直しが行われる可能性も否定できない。ドイツの試行錯誤の経験は、他の国の事例とも比較した上で評価する必要がある。

電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 主任研究員
古澤 健/ふるさわ けん
2007年入所。博士(工学)。専門は電力系統工学。

図

電気新聞2018年11月28日掲載

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