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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (200)

2020年の電気事業制度の変革に伴う課題とは?

 2020年は、電力システム改革の第3段階となる、送配電事業の法的分離に加え、容量市場のメインオークションや、非FIT電源対象の非化石価値取引市場のオークションも開催され、需給調整市場を除く新市場も本格的に始動する。再生可能エネ政策に伴う電力市場やネットワークの課題も新たな局面を迎える。

【競争入札で促す再生可能エネの市場統合】

 再生可能エネ政策は、FIT(固定価格買取制度)に代わり、FIP(フィード・イン・プレミアム)の導入により、一つの転換点を迎える。FIPでは、再生可能エネ事業者がインバランスリスクを負った上で、卸市場等から電力販売収入を得るとともに、入札による価格と過去の卸市場価格に基づく参照価格との差分をプレミアム(環境価値)として受け取る。競争入札を通じて、数年後にはプレミアムの評価がゼロとなり、再生可能エネへの補助がなくなれば、火力等の従来電源と再生可能エネを卸市場の中で同一に扱う「市場統合」が実現する。
 この方向性自体は評価できるが、FIPで鍵となる入札が、日本で十分なコストダウンをもたらしていない。FITにおいても、事業用太陽光の競争入札が2017年度から計4回実施され、1kW時あたりの平均落札価格は約20円から約13円まで下落した。しかし、国際的には極めて高いままである。これまで世界で最も落札価格が高かったドイツでも、同時期の落札価格は日本の半分以下である。高価格の原因は、対象電源を2MW以上としたことで応募件数が限られ、競争原理が働かなかったことにある。現在4か所に促進区域が絞られた洋上風力でも、今後入札が実施されるが、同じ問題は回避されねばならない。

【レジリエンス強化の具体策とその検証】

 風力や大規模太陽光はFIPに移行する一方、10~50kWの太陽光は自家消費型、50kW以上の水力・地熱・バイオマスは地域一体型として引き続きFIT対象である。
 これにはレジリエンス強化の狙いもあるが、いずれの電源も将来的に補助が不要となる具体的な根拠は示されていない。長期エネルギー需給見通しでは、30年度の再生可能エネ買取総額を4兆円に抑えるとしているが、今年度既に3.6兆円であり、国民負担の抑制は急務である。
 レジリエンス強化は重要な課題であるが、達成の条件と尺度、そのための具体的な方策については、あらためて検討が必要である。その上で、有効と考えられる方策を費用対効果の検証に基づき選択する必要がある。

【事業者が中長期的な費用の低減を目指せる託送料金制度】

 再生可能エネが拡大する中で、電力システム全体の経済効率性を高めていくには、新市場を含めた市場メカニズムによる発電側の効率化だけでなく、送配電ネットワークの適切な運用と整備も不可欠となる。しかし、再生可能エネ、および、それらを補完するデマンドレスポンスや貯蔵技術などの分散型資源の増加への対応に伴い、送配電費用の増加が懸念されている。そうした中で、日本の託送料金制度については、従来の総括原価方式から、効率化の努力を評価するレベニューキャップへの移行が検討されている。
 送配電網の増強費用を抑えるために、デジタル技術を活用した運用面での取り組みも期待されている。他方で、設備投資や技術開発を着実に進めることも中長期的な費用の低減には必要である。設備投資費用と運用強化の経費の組み合わせなどに関しては、ネットワークを熟知する送配電事業者が、中長期的観点から送配電の総費用の最小化を目指した選択ができるよう、合理的なインセンティブの設計が重要である。

【課題の検証に資する客観的な定量評価を目指して】

 元来、再生可能エネ政策と、市場や規制を通じた効率化の整合性の確保は難しい中で、より望ましい制度のあり方を検討するには、具体的な課題への対応策の効果に関する定量的な評価が欠かせない。評価に際し、実情やデータを的確に反映するには高い専門性も要求されるが、研究機関である当所がそうした役割の一端を担うことができるよう、今後も最大限の努力を続ける所存である。

電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 上席研究員
朝野 賢司/あさの けんじ
2007年入所。専門は環境経済学、再生可能エネルギー政策。博士(地球環境学)。

電力中央研究所 社会経済研究所 事業制度・経済分析領域リーダー 副研究参事
服部 徹/はっとり とおる
1996年入所。専門は公益事業論。博士(経営学)。

電気新聞2020年1月22日掲載

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