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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (204)

8年余の連載を通じて見えてきたものは何か?

 本「ゼミナール」連載は、東日本大震災後の2011年7月11日に開始し、私ども社会経済研究所が執筆を担当、現在は隔週水曜掲載、今回で通算204回となる。
 100回記念特別掲載(2016年1月18日)以外の論稿を改めて分野別にみていくと、この間の電気事業の来し方を鮮明に振り返ることができる。

【電気事業制度―複雑化する制度設計】

 最多の58件を掲載した電気事業制度関連では、電力システム改革の進展につれて、個別の市場や制度の設計の評価と改善提案を行ってきた。本年4月の法的分離をもって、一連の制度関連研究は、設計から運用の評価へと移行するが、そこでは複数市場の連動という新たな領域に入っていく。今後に向けた重点検討項目については、第200回(2020年1月22日)を参照されたい。

【電力経営―震災復興から新ビジネスへ】

 40件を掲載した電力経営分野では、連載開始直後は、災害リスクや被災からの復興を取り上げた。その後、欧米事業者の先進事例に取材しつつ、その事業モデルの変遷を読み解き、日本への適用を占う論稿を重ねてきた。後述の電化関連の技術動向も踏まえつつ、今後も重要な研究分野として取り組む。

【原子力政策―社会との関係性の再構築】

 26件の原子力政策関連では、社会との関わりの新たな方向性を模索する努力を続けた。原子力リスク研究センター(NRRC)との共著による、リスクコミュニケーションの意義の再考(第118回、2016年10月24日)などは、その一端である。
 直近2件(第202・203回、2月19日、3月4日)は、国際機関を中心とする原子力への最新の論調を紹介している。解決の方途を見出すまでにはなお長い道程となろうが、今後も検討を掘り下げていく。

【温暖化政策―政策スコープの拡がり】

 15件を掲載した温暖化政策関連では、火力発電規制や炭素価格制度などに加えて、近年では企業の情報開示や研究開発戦略など、対象とする政策分野が急激に拡大している。
 その中で、2050年にCO2排出量80%削減を実現するための試算(第180回、2019年5月8日)は、大きな意義のある成果となった。
 試算でも提唱したように、温暖化抑制のためには、電化と発電の低炭素化の組み合わせが重要である。今後も当所環境科学研究所、エネルギーイノベーション創発センター(ENIC)等とも協働しつつ、研究を展開していく。

【経済環境―構造変化を見通すために】

 17件の本分野では、当初は震災後の経済復興ほどに電力需要の伸びが戻らない問題に取り組み、省エネ型設備への更新とともに、産業構造にも変化が見られたことを明らかにした。将来の社会・経済状況を見通すことは容易くないが、温暖化の国際公約の遵守の行方とも相まって、将来の読み解きの重要性は一層高まろう。

【再生可能エネー主力電源化と国民負担軽減の両立】

 24件の本分野では、先行する欧州諸国に取材しつつ、FITに代表される支援政策の国民負担面等での得失を論じてきた。最近では、太陽光・風力のポテンシャル評価についても公表し、政策論議に一石を投じている。今後も、主力電源化の可能性と国民負担について深掘りしていく。

【省エネ・節電―新たなビジネス展開】

 22件のうち、7件はENICにより、デジタル化がもたらす新たなビジネス展開の可能性を提示している。
 震災直後の節電対応から、省エネサービスや新たなビジネスモデルの探索へと、関係者の関心が移りかわってきた。今後、脱炭素化のための需要側対策として、電化が一層注目されていくだろう。私ども電中研の総力を結集して、電気事業の新たな地平を切り拓くお手伝いができればと希求している。

【今後に向けて】

 以上、これまでの連載を分野別に概観した。これまでの報告が、少しでも皆様のお役に立つものであれば、望外の幸せである。
 来月以降は、社会経済研や当所各研究部門が分担して、各々の最新の研究成果をご紹介する。今後とも本欄をご愛読戴くよう心よりお願いを申し上げつつ、いったん筆をおく。

電力中央研究所 社会経済研究所所長 研究参事
長野 浩司/ながの こうじ
1987年度入所。専門はエネルギー政策・エネルギーシステム分析。博士(工学)

電気新聞2020年3月18日掲載

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