社経研DP
2015.02.17
太陽光発電・風力発電の大量導入による固定価格買取制度(FIT)の賦課金見通し
- 再生可能エネルギー
要約
本稿では、今後の買取価格や買取見込み量の想定を置いた上で、再エネ比率と賦課金単価・年間賦課金額の推移・累積賦課金額を以下のケースについて試算した。具体的には、FITの設備認定が2014年度で終了する「FIT廃止ケース(太陽光発電(PV)の接続可能量が設定された電力各社では、これを超過した導入は行われない。接続可能量が未設定の中三社では、2013年度に各社エリアで認定されたのと同じ量が2014年度にも認定・導入される。その他再エネは2014年10月末時点の認定実績まで導入される)」と、「最大ケース(PVは2030年時点で累積導入量1億4000万kWに、風力は同1140万kWに到達する。その他再エネは、2014年度と2015年度は2013年度実績と同量が導入される)」である。
第1の結論として、再エネ比率は、廃止ケースで20.6%、最大ケースで29.8%である。2014年4月に閣議決定された『エネルギー基本計画』の再エネ水準と比較すると、前者はほぼ同程度、後者は大幅に上回る。
第2に、ピーク時の年間賦課金額・同賦課金単価、および累積賦課金額は、前者で2023年度に2.6兆円(2.96円/kWh)、累積53兆円、後者で2032年度に4.1兆円(4.72円/kWh)、累積84.8兆円である。前者では、2020年代前半にピークを迎え、この水準の年間賦課金額が約10年間継続する。前述のとおり、前者は、FITが2014年度で廃止されるという極端な想定をしているが、その場合ですら、今後の賦課金額は莫大なものとなる。
我が国は、FIT先行国が直面したPVバブルという失敗に学ばず、導入上限等の対策が未だに取られていない。その結果、2020年度頃には年間2兆円を超え、ドイツ(2012年実績2.2兆円)に匹敵する世界最大規模の賦課金負担が生じうる。既にPVの設備認定は莫大であるため、賦課金を抑制する方策は限られるが、上限や入札等の実施により、少ない費用で、出来るだけ多くの再エネ供給を得る、効率性の観点に立ち返ることが重要である。