社経研DP

2018.03.26

分散型エネルギー源の利活用を前提とした配電料金設計のためのモデル分析の動向と課題

  • 電気事業制度

SERC Discussion Paper 17002

星野 光  

要約

 再生可能エネルギー電源や蓄電池などの分散型エネルギー源(DER)の普及が進む中、需要家(およびその集団)の電力消費パターンを把握することは、配電系統の設備計画のみならず、配電料金設計の議論においても重要である。需要家がDERを導入し、系統からの買電量が減少すると、従来通りの従量料金による回収額は減少する。一方、DERを導入してもピーク需要が変わらなければ、従来と同等の系統設備が必要である。この場合、従量料金単価の値上げが難しければ、配電事業者が設備費用の回収漏れに陥るという懸念がある。
 本報告では、上記の費用回収漏れの問題に関連して、配電料金の変更に対する需要家の反応を予測するモデル分析の動向を解説する。各需要家のDER導入の意思決定やその運用には、配電料金の変更が、小売電気料金を介して影響する。これを考慮した分析の結果、料金設計における種々の原則を満たしつつ費用回収を確実に行う料金構造は見つかっていない。しかしながら、料金構造の工夫次第では、配電系統にとってのピーク需要を抑制するように、DERの運用を促すことが可能であることが示唆されている。すなわち、DERを系統運用に積極的に活用することで、将来回収すべき設備費用自体を低減することが、将来の費用回収漏れの懸念を緩和する方策として有効であると期待される。
 一方、上記方策は、DERの適切な運用を前提としなければ系統制約逸脱が生じうる場合でも、必ずしも系統増強を行わないことを意味する。これは現状の配電系統の設備計画の考え方とは異なるものである。上記方策に起因する配電料金設計上の課題として、系統制約逸脱を解消するためのDERの出力制御への対価の支払いがあるが、これにより新たに生じる系統運用費用の評価に関わるモデル分析は、先駆的な少数の報告に限られており、今後さらなる検討が必要である。

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