社会経済研究所

ディスカッションペーパー

EUにおける「グリーンリカバリー」の動向 ―「コロナ後」の復興と欧州グリーンディール ―

  • 堀尾 健太
  • SERC Discussion Paper 20001
  • Date:2020.6.12
   

要約

 欧州連合(EU)は、長年気候変動対策に積極的であるが、緑の党の躍進が注目された2019年5月の欧州議会選挙などを経て、現在、気候変動の政治的な優先順位が非常に高い。特に注目されているのが、2019年12月に欧州委員会が公表した政策文書「欧州グリーンディール」である。この文書は、気候変動対策を中核とした包括的な政策パッケージであるが、従来の気候変動対策の射程(温室効果ガスの排出削減など)を超え、経済や社会に関する様々な政策領域を包含していることが特徴である。新型コロナウィルス感染症の影響により、この文書で打ち出された施策の実施は、当初の予定よりも後ろ倒しされる見込みであるが、一方で、「コロナ後」の復興の文脈においても、欧州グリーンディールの重要性が強調されている(「グリーンリカバリー」とも呼ばれている)。
 2020年5月27日、欧州委員会は、「コロナ後」の復興のための基金Next Generation EUの提案を公表した。この提案は、通常のEU予算とは別に7500億ユーロを市場から調達し、EUを通じて分配するというものである。この提案の中でも「欧州グリーンディールはEUの成長戦略」であると明記されており、クリーンエネルギー技術への投資、建物やインフラの改修、運輸やロジスティクスのクリーン化、公正な移行基金の増額などが含まれている。また、調達した資金の返済のための財源の候補として、排出量取引制度(ETS)のオークション収入や国境炭素調整メカニズムなどが言及されている。
 基金の創設にはEU加盟国の全会一致が必要であり、今後、交渉が本格化する。既に、基金の規模、調達した資金の返済方法、加盟国へ分配した資金のEUへの返済の有無などの対立点が顕在化しており、着地点を見通すのは難しい。欧州グリーンディールとの関係では、EUから加盟国に資金を分配する際の条件や基準などが注目される。

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「社会経済研究所 ディスカッションペーパー」の記載において、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではありません。

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