社会経済研究所

ディスカッションペーパー

バイデン政権の気候変動対策−新政権発足後の動向と野心的な公約の実現可能性−

  • 上野 貴弘
  • SERC Discussion Paper 20008
  • Date:2021.2.4
   

要約

 2021年1月20日に就任した米国のバイデン大統領は、2050年までに米国全体でネットゼロ排出を実現することを目指し、「部門別の排出規制強化」(たとえば電力部門の排出を2035年までにゼロとするクリーンエネルギー基準の導入)と「インフラ・クリーンエネルギーへの投資」(政権1期目の4年間で2兆ドル)を行うという野心的な気候変動対策を選挙戦中に公約していた。バイデン政権は、「新規立法」および「既存法の下での規制等の強化」という2つの手段を駆使して、これらの公約の実現を図ることになる。また、気候変動に関する外交について、バイデン大統領は、就任当日のパリ協定への復帰通告に加えて、首脳気候会合(Leaders’ Climate Summit)を4月22日に開催し、同会合に先立ってパリ協定の下で掲げる2030年目標を提出することを目指すと表明するなど、新政権の発足直後から外交活動が活発化している。
 本稿では、バイデン政権における気候変動対策の行方を見極めるために、「@新規立法による部門別規制とインフラ・クリーンエネルギー投資の実現可能性」「A既存法の権限による部門別規制等の実現可能性」「B気候外交と2030年目標の見通し」を考察した。@については、野心的な規制強化のための新規立法は困難である一方、インフラ・クリーンエネルギー投資に関しては公約に近い規模が実現する可能性があることを、Aについては、新政権は実施しやすい分野については速やかに規制策定に着手する一方、大規模削減を可能とする規制を実現できるかは保守化した連邦最高裁の判断次第であることと、規制以外の取り組み(政府調達のクリーン化、環境正義、公正な移行等)も進めていることを、Bについては、新政権発足当初から動きが活発化していることと、国内政策が定まる前に2030年目標を提出することになるため、実現可能性はあるものの確実とまでは言えない政策を前提とすることになり、目標の裏付けの強度に課題が残るであろうことを論じた。
 このように、バイデン大統領の野心的な気候公約のうち、部門別の規制的措置に関するものが完全に実現する可能性は低いが、インフラ・クリーンエネルギー投資については実現の可能性が出てきており、再エネ・電気自動車等の技術コストの低下やESG投資の拡大による金融面での後押しも合わせて考慮すれば、オバマ政権以上の取り組みを期待することができる。米国の気候変動対策はトランプ政権期の停滞を脱し、大きく前進するものと見込まれる。

※本ディスカッションペーパーは、2020年12月24日に発表した「バイデン次期政権の気候変動対策−野心的な公約は実現するのか−」(SERC Discussion Paper 20007)を、その後の動き(バイデン政権の発足、1月20日及び27日の大統領令等)を踏まえて、内容を更新したものである。

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免責事項

本ディスカッションペーパー中、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではない。

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