社会経済研究所

ディスカッションペーパー

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で示された水素の役割と課題

  • 吉岡 七海、朝野 賢司、永井 雄宇
  • SERC Discussion Paper 20011
  • Date:2021.3.23
   

要約

 本研究では、2017年に決定された水素基本戦略と、2020年に決定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(以下、CN戦略)」について、目標とする水素の導入量等を整理した上で、水素供給と需要の両面からCN戦略実施の課題を検討した。
 その結果、水素供給の面からは、2050年に2,000万t程度の「クリーン水素」(化石燃料+CCUS、再エネ等から製造された水素)を供給するにあたり、国内で再エネ由来水素を製造する場合には再エネ発電量の確保が、国内で化石燃料+CCUSで水素製造する場合にはCO2貯留地の確保が、液化水素での輸入を行う場合には運搬船の大型化が、各々課題となることがわかった。
 水素の潜在的な需要規模は、トラック等の商用車(以下、商用車)、発電、鉄鋼、化学、熱需要の分野を合計して、約3,700〜4,200万tであると本研究では推計した。具体的には、商用車、発電、鉄鋼については、CN戦略内で「一定の仮定に基づく導入量」が示されており、順に約600万t、約500〜1,000万t、約700万tである。化学と熱需要については、CN戦略では同規模が示されていないため、約1,100万tと約800万tと推計した。
 一方で、水素の供給目標を十分に上回る潜在的な需要規模があるからといって、供給量を確保することが必ずしも需要喚起につながるとは言えない。水素の利用に際し、CN戦略では技術的課題として、CN戦略では、燃料電池トラック等の商用化、発電における安定燃焼性の実証、100%水素還元製鉄の技術確立、水素由来プラスチックの製造コスト等が指摘されている。これらに加え、商用車では液化水素輸送網の拡大、化学ではCO2循環の確立、熱需要では水素転換が可能な温度帯が限られること等の課題が挙げられる。
 CN戦略が示す「水素社会」の実現には、供給・需要・利用において様々な課題の克服が前提となる。本研究で推計した需要規模はあくまで潜在的なものに過ぎず、その実現には各分野の技術的・経済的な課題の解決が必要である点には留意が必要である。

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本ディスカッションペーパー中、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではない。

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