社経研DP

2021.03.25

非ガウス型状態空間モデルを用いた季節調整モデルの構築と電力需要のトレンド推定

  • エネルギー需要

SERC Discussion Paper 20012

要約

 電力需要や経済データは、季節変動など毎年同じ時期に同様な変動を繰り返す特有なパターンを持つことが多く、電力需要の趨勢の判断や予測を行う場合には、この特徴を考慮しないと誤った結論を導く可能性がある。特に、自然災害や金融危機などによって、電力需要に大きな変化が見られるときは、構造変化による需要の変化と季節変動を精緻に識別することがより難しくなる。季節的な変動を含む時系列データを分析する場合、季節変動そのものに注目する場合もあるが、季節変動では説明できない変動や趨勢の判断について分析を行うことも少なくない。その場合、原系列から季節変動を取り除いた系列を推定する必要がある。このような推定には、従来、ガウス型状態空間モデルを用いた季節調整などが行われることが多いが、時系列データに大きな構造変化が見られる場合には、事前にダミー変数などを用いて、膨大な組み合わせを探索的に推定する必要がある。しかし、本研究では、非ガウス型状態空間モデルを用いた季節調整モデルを採用することで、ダミー変数などを用いずに構造変化を含む電力需要のトレンド推定を試みる。
 本研究では、東日本大震災を含む期間(2000年1月~2016年3月)を対象に、電力需要(TWh、販売電力(量)合計、東京電力)のトレンド推定を試みた結果、従来の正規分布(ガウス分布)を仮定したガウス型季節調整モデルよりも、非ガウス型分布を仮定した季節調整モデルを採用することで、情報量規準に基づくモデル選択の結果から、非ガウス型季節調整モデルが最良なモデルとして選択された。推定された電力需要のトレンドは、震災前後でトレンドの変化が観測され、非ガウス型季節調整モデルが電力需要の構造変化に適応できていることが分かった。今後、コロナ禍における電力需要のトレンド変化の分析や系統需要を用いた景気変動等による需要変動(持続的需要変動)の推定(電力広域的運営推進機関、2020)など幅広い応用が考えられる。

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