社経研DP

2021.08.30

EUにおける「タクソノミー」の動向―スクリーニング基準の策定状況と今後の見通し―

  • 気候変動

SERC Discussion Paper 21003

要約

 2020年7月12日、「持続可能な投資の促進のための枠組み」に関するEU規則2020/852が発効した。この規則は「経済活動が、環境的に持続可能かどうかを判断する基準」(EUタクソノミー)の確立を目的としている。EU域内の金融機関および企業は、本規則に基づいて情報開示が求められる。
 本規則では、環境的に持続可能な経済活動の基準として、①1つ以上の「環境目的」に貢献すること、②他の「環境目的」を著しく阻害しないこと、③環境以外の価値(人権等の保護)を守ること(ミニマムセーフガード)、④スクリーニング基準を遵守すること、の4つを満たすことが定められた。「環境目的」としては、気候変動の緩和、気候変動への適応、水および海洋資源の持続可能な利用と保全、循環経済への移行、汚染の予防と管理、生物多様性および生態系の保全と回復の6つが定義された。
 スクリーニング基準は、個別の経済活動が、特定の環境目的に貢献するか/阻害しないかを判断するための基準(例えば温室効果ガス排出量の上限など)である。これは、欧州委員会が定めることになっており、助言機関として、金融や産業界、市民社会などの代表から構成される「サステナブルファイナンスに関するプラットフォーム」等が設置された。
 2021年6月4日、欧州委員会は、気候変動の緩和および気候変動への適応に関するスクリーニング基準を採択した。この中では、排出量が大きい、あるいは排出削減に寄与する9セクター(電力・ガス、運輸、製造業等)88の経済活動について基準が定められたが、セクター横断的に一律の考え方があるわけではなく、個々のセクターや経済活動の特性を踏まえたものになっている。

※本ディスカッションペーパーは、2020年8月17日に発表した「EUにおける『タクソノミー』の動向-スクリーニング基準の検討状況と今後の見通し-」(SERC Discussion Paper 20003)を、その後の動き(欧州委員会によるスクリーニング基準の採択)を踏まえて、内容を更新したものである。

※本ディスカッションペーパーに関連する研究成果は、以下の研究報告にまとめています。合わせてご覧ください。
 ・EUタクソノミーにおける気候変動の緩和 -主要セクターのスクリーニング基準の分析-(2022年2月発行)
 ・EUタクソノミーにおける天然ガスと原子力―「トランジショナルな活動」に位置づけられた経緯とスクリーニング基準の分析―(2023年4月発行)

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