社会経済研究所

ディスカッションペーパー

パリ協定時代の気候変動対策における「公正な移行」

  • 若林 雅代、堀尾 健太、外崎 静香
  • SERC Discussion Paper 21004
  • Date:2021.12.22
   

要約

 2015年に採択されたパリ協定は、その前文で、「労働力の公正な移行(just transition)ならびに適切な労働及び質の高い雇用の創出が必要不可欠であることを考慮」することに言及している。公正な移行とは、気候変動対策の実施に伴って、相対的に大きな負担を受ける産業分野とこれに従事する労働者、及びこれらの産業が立地する地域を支援することである。2020年からパリ協定の運用が始まり、多くの締約国が、温室効果ガスの排出削減目標の引上げを行った。今後、目標達成に向けて、様々な対策が講じられると見込まれるが、その際、「公正な移行」は注目点の1つである。
 米国では、気候変動対策に積極的なバイデン政権の下、「石炭・発電所コミュニティと経済活性化に関する省庁間作業部会(IWG)」が設置された。2021年4月のIWG中間報告では、支援の緊急性が高い25の地域と即時に執行可能な支援プログラム(380億ドル)を特定した。また、同11月15日に成立したInfrastructure Investment and Jobs Actには、エネルギー開発跡地の環境修復のための投資(210憶ドル)が含まれている。
 欧州連合(EU)では、欧州グリーンディールの下で、2021年6月に「公正な移行基金」が創設された。同基金では、気候中立経済等への移行に伴い、深刻な社会経済的課題に直面する地域において、人や経済、環境に対する支援を提供するため、2021年から2027年までに総額175億ユーロを支出する。
 ドイツでは、石炭火力の段階的廃止の決定を踏まえ、2020年7月に「石炭地域構造強化法」が制定された。石炭火力が全廃されるまでの地域経済の構造転換を支援するスキームを制度化し、資金規模や支援内容を明文化したもので、支援総額は400億ユーロに及ぶ。2021年12月8日に発足した新政権の下で、これらの措置は加速する見込みである。
 民間セクターでも、労働者や雇用主の国際的な組織が報告書やポリシーペーパーを公表し、機関投資家が投資行動や企業との対話等において公正な移行に配慮するなど、気候変動への対応における公正な移行に関して、国際レベルでの取組みが進んでいる。

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本ディスカッションペーパー中、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではない。

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